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義実家を見下す実親
「もう二度と帰らないかもしれない」
東京都内で夫と5歳の長男と暮らす佐藤美咲さん(35歳・仮名)は、お盆休みから戻る新幹線の中でそう口にしました。
結婚8年目。夫の拓也さん(37歳)は地方の出身で、義父は今も工場で働き、義母はスーパーのパートを続けています。決して裕福とはいえませんが、美咲さんは「温かい家庭」だと感じています。
一方、美咲さんの実家は東京都内。父・佐藤隆一さん(68歳・仮名)は大手メーカーを定年退職し、現在は年金月20万円。母・久美子さん(66歳・仮名)は年金月8万円を受給。夫婦の年金収入は合計月28万円になります。預貯金を含めた金融資産は約4,000万円あり、毎年海外旅行や外食も楽しめる余裕がありました。
「うちは本当に恵まれてきたから」
それが父の口癖でした。ところが、その「恵まれている」という意識が、美咲さんには年々つらくなっていきます。結婚当初から、実家で食事をするたびにこんな会話が繰り返されました。
「拓也さんのお父さんって高校を卒業して、ずっと頑張って働いてらっしゃるのね」
「退職金も都会の会社ほど、もらえないじゃない」
「大変よ、いろいろと」
夫がいない場面を選ぶように話すため、美咲さんも最初は受け流していました。しかし、年々その言葉は露骨になります。
「孫はうちの教育レベルに合わせないとね」
「向こうのうちみたいに、苦労しないようにね」
笑いながら話す母に、美咲さんは何度も「やめて」と伝えましたが、両親の態度は変わりませんでした。昨年のお盆、美咲さん一家は実家へ2泊3日で帰省しました。交通費は約6万円。
「孫に会わせたい」
その思いから、毎年お盆の帰省を続けています。
美咲さんの実家の年金収入28万円(年336万円)は、厚生労働省『2025年 国民生活基礎調査』における2024年の高齢者世帯の平均所得金額336.1万円とほぼ同水準です。しかし、約4,000万円の金融資産は、同調査の高齢者世帯の平均貯蓄額1,647.6万円を大幅に上回り、貯蓄額「3,000万円以上」の世帯(高齢者世帯全体の15.3%)という、ゆとりがある層に該当します。
一方、美咲さん夫妻のような「児童のいる世帯」は、同調査で61.5%(「大変苦しい」27.6%、「やや苦しい」33.9%の合計)が生活を「苦しい」と感じており、帰省交通費6万円の負担も小さくありません。実親の「恵まれている」という認識は統計的にも裏付けられますが、子世代の厳しい現実との間には大きな乖離があります。