内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によると、高齢者が今後の生活において経済的な面で不安に思うこととして、「物価が上昇すること」を挙げる人が74.5%と圧倒的に多く、最多となっています。さらに、「自分や家族の医療・介護の費用がかかりすぎること」(36.6%)や「自力で生活できなくなり、転居や有料老人ホームへの入居費用がかかること」(43.1%)といった将来への不安が上位に並びます。将来に備えて日々節約に励む親世代にとって、数万円の負担は決して軽いものではありません。しかし、子世代はその経済的な痛みに気づかないことが多々あります。事例をみていきましょう。
「孫は来てよし帰ってよし」でしょ?…年金月16万円・72歳女性、滞在費の負担8万円を少し口にして見えた〈長女家族の本心〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

あからさまになった長女の態度

ところが、この打診に対する長女の反応は、ヨシコさんの予想を大きく裏切るものでした。電話越しに一瞬の沈黙があったあと、長女はあからさまに不機嫌な声でこう言い放ったのです。

 

「えっ、お金? 『孫は来てよし帰ってよし』って言うじゃない。お母さんが孫に会いたいから行ってるんじゃないの? 実家に帰るのにお金請求されるなんて聞いたことないんだけど」

 

そのまま一方的に電話を切られ、それ以来、長女夫婦からの連絡はパタリと途絶えてしまいました。SNSの家族グループでの発言もなくなり、いままで定期的に届いていた孫の写真や動画も送られてこなくなったのです。

 

ヨシコさんは当初、「請求の仕方が悪かったのだろうか」「娘に意地悪な親だと思われてしまったのではないか」と深く悩みました。しかし、いまとなっては「『孫は来てよし帰ってよし』っておまえがいうなと思いました。どの口が、ですね。育て方を間違えたのかもしれません」と怒りの感情へと変わっています。

親子間における「経済的境界線」

子世代から見れば「実家は甘えられる場所」という思い込みがあり、親世代側も「子や孫のためなら」と無理をしてしまいがちな帰省時の金銭問題。しかし、現代においてこの溝を放置することは、高齢親の老後破綻を招く大きなリスクとなります。

 

高齢親の年金収入は、あくまで親自身がこれからの人生を自立して生き抜くための生活基盤です。物価高や年金給付額の現状を考慮すれば、子世代ファミリーの滞在費を親が全面的に負担する余裕がないケースが増えている現実を、子世代側も理解する必要があります。

 

孫に会う喜び(精神的満足)と、現実の金銭的負担は別物です。「喜びを感じているからお金も負担すべきだ」という論理は、親に対する無意識の搾取になりかねません。帰省費用や滞在中の食費は、子世代自身が自分たちのレジャー費の一部として負担するのが本来の筋といえます。

 

実家帰省の際、食費やレジャー費の分担についてあらかじめルールを決めておくことは、決して冷たいことではありません。「食費として〇万円を入れる」「外食費は子世代が持つ」「滞在期間を短くする」といった明確な線引きを行うことが、互いに不満を溜め込まずに長く良好な関係を保つ鍵となります。

 

子どもや孫との絆は大切ですが、親が自身の老後を犠牲にしてまで過剰なもてなしを続ける必要はありません。お互いが自立した大人として尊重し合い、負担を分かち合う姿勢が求められています。

 

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