離婚した娘と孫を支えようと、温かい手を差し伸べる親世代。十分な蓄えがあっても、善意の支援が思わぬ落とし穴となり、家族の関係をいびつにしてしまうことがあります。ある家族の事例から、家族の自立を促し、お互いにとって心地よい距離感やルールをどう保つべきか、考えていきます。
「じいちゃん、お金ちょうだい!」〈年金月18万円・貯蓄2,800万円〉69歳男性、孫のおねだりに「もう、お金はあげない」と決めた日 ※写真はイメージです/PIXTA

「当たり前」になっていた支援

娘家族との生活に変化があったのは、ふと、家計を振り返ったことにあります。娘家族との同居が始まって、月5万〜7万円ほど支出が増えていました。そこには、誕生日プレゼントなどの特別な支出は含まれていません。足りない分は預貯金を取り崩していました。

 

大した金額ではない――

 

そう思う一方で、この状態が本当に良いのかは、答えを出すことができませんでした。そんなある休日、ショッピングモールへ出掛けたときのことです。孫が文房具店で筆箱を手に取りました。

 

「じいちゃん、これ買って」

 

和雄さんが笑いながら財布を出そうとしましたが、ふと、「これ、本当に必要なもの? 我慢できるものではない?」と尋ねました。孫は不思議そうな顔をして「どうしたの? いつもじいちゃんが買ってくれるでしょ?」と言いました。

 

その一言で和雄さんは胸がざわつきました。孫にとって、「欲しいものは祖父が買ってくれる」、それが当たり前になっていました。その状況をつくったのは――自分たちでした。

 

帰宅後、美咲さんに話を切り出しました。

 

・今まで孫を甘やかしてきた

・頼られるのはうれしい。しかしマイナスとなる部分もある

・美咲さんも、最初に決めた5万円はきちんと入れてほしい

 

しばらく沈黙が続いたあと、美咲さんが口を開きます。

 

「ごめん……。助けてもらうことに慣れてた」

 

その夜、家族で新しい約束を決めました。

 

・美咲さんは生活費を毎月5万円入れる

・孫のお小遣いや買い物は、美咲さんが判断する

・そのうえで祖父母は都度、支援を決める

 

数日後、スーパーで孫が言いました。

 

「じいちゃん、お菓子買って」

 

和雄さんは笑って答えます。

 

「お母さんに相談してごらん」

 

美咲さんは財布を取り出し、「今日は一つだけね」と子どもに伝えます。そのやり取りを見ながら、和雄さんは少し肩の力が抜けたといいます。

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、親と同居する離別女性のうち、過去1年間に同居する父親から「5万円以上」の経済的支援を受けた割合は38.5%に上り、母親から支援を受けた割合も「5万円未満」が37.0%、「5万円以上」が34.6%と、実に7割以上が経済的支援を受けているのが実態です。また、同居する父親から「孫の世話」の手助けを受けている割合も37.5%に達しています。

 

佐藤さん夫婦のように、ひとり親世帯の生活再建を実親が経済・生活面で手厚くサポートするケースは少なくありません。甘えが生じるリスクを防ぐため、生活費の支払いや買い物の決定権など「明確なルール(線引き)」を作ることは、親子双方が自立した良好な関係を保つために有効といえます。