長年真面目に働き続けてきた人であっても、社会保険制度への無関心や突然の介護負担が重なることで、誰しもが老後破綻に陥るリスクを抱えています。ある男性の事例から、老後の危機を防ぐために確認すべきポイントと、活用できる公的支援策についてみていきます。
「どう生きていけばいいのか、わからない…」50年間真面目に働いて〈年金月10万円〉の68歳男性、要介護2の母親を抱え、老後破綻に怯える日々 (※写真はイメージです/PIXTA)

要介護2の母親と同居…世帯収入16万円で貯金は目減りする一方

さらに田中さんを追い詰めているのが、同居する87歳の母親の介護です。母親は最近になって要介護2の認定を受けました。立ち上がりや歩行に支援が必要となり、週に数回のデイサービスなどの介護保険サービスが欠かせない状態となっています。

 

母親自身の年金は月額約6万円です。田中さんの年金と合わせても、世帯収入は月に16万円しかありません。そこから2人分の食費、光熱費、家賃に加え、介護サービスの自己負担分やおむつ代などの消耗品費を支払う必要があります。

 

「助けて…と誰かにすがりたいです。毎月必ず赤字になり、貯金を切り崩しています。どう生きていけばいいのか、わからないんです」

 

手元にある貯蓄は約100万円しかありません。毎月数万円の赤字が続けば、あと3年も持たずに家計は完全に破綻します。

 

公益財団法人生命保険文化センターの『2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査』によれば、介護に要する月々の費用は平均6.7万円(在宅介護で3.7万円、施設で12.5万円)に上ります。さらに一時的な費用として平均115万円がかかるとされています。世帯収入16万円の田中さん親子にとって、この負担は致命的です。

 

同センターの『2025(令和7)年度 生活保障に関する調査』では、将来親などを介護することに不安を感じる人は81.6%に上ります。そのうち57.6%が「家族の経済的負担」を懸念しています。事前の準備がないまま介護に直面することが、いかに家計破綻のリスクを高めるかがデータからも読み取れます。

 

田中さんのようなケースは、現代の日本において決して珍しいものではありません。ただ真面目に働くだけでは、老後の生活は守れない現実があります。

 

自身の社会保険の加入状況を把握し、必要な対策を講じておくことが求められます。また、すでに困窮している場合は、迷わず専門機関を頼ることが重要です。

 

田中さんの場合、まずは地域包括支援センターに相談し、介護費用の負担軽減策や利用可能な福祉制度を確認する必要があります。いよいよ資金が底を突けば、生活保護の申請も視野に入ります。無知ゆえに陥った窮地から抜け出すためには、行政の制度を正しく知り、躊躇なく活用することが唯一の道となります。