持ち家はあるものの年金だけでは生活が苦しく、老後資金の不安から「リバースモーゲージ」を利用する高齢者たち。自宅を活用できる安心の制度に見えますが、思わぬ落とし穴に直面するケースも少なくありません。ある母娘の事例を通して、制度の隠されたリスクや家族を守るために知っておくべき注意点を解説します。
「母は騙されたんです」48歳ひとり娘、怒りの訴え。〈年金月12万円〉72歳母、〈リバースモーゲージ利用〉の末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

「実家を残す」はずだった…娘にも迫る老後破綻

問題は、それだけでは終わりませんでした。

 

由香さん自身も契約社員として働き、手取り月収は約21万円。老後に備えた貯蓄は約350万円しかなく、親を支える余裕はありません。

 

ところが、節子さんが契約していたのは、担保物件を売却しても借入残高が返済しきれない場合、相続人にも返済義務が及ぶ「リコース型」の契約でした。

 

「母は『この家は将来あなたに残す』とずっと言っていました。でも実際には、私に相談もなく家を担保に入れ、契約内容によっては借金まで残る可能性があったんです」

 

幸い、由香さんは専門家を交えて金融機関と協議し、追加融資は停止する一方で、すぐに自宅を売却したり競売にかけたりすることなく契約を継続できることになりました。しかし、生活費は年金だけでは足りません。由香さんは毎月3万円を仕送りし、自身の老後資金を切り崩しながら母を支えています。

 

「親を見捨てることはできません。でも、このままでは私自身の老後資金までなくなってしまう。母も被害者だと思いますが、家族みんなが苦しくなる制度だったんだと痛感しています」

 

内閣府『令和8年版高齢社会白書』によると、65歳以上の者の住居形態は「持家(一戸建て)」が79.8%を占め、8割以上が持ち家に暮らしています。一方で、高齢者世帯の平均所得金額は314.8万円と、現役世代を含むその他の世帯(671.0万円)の半分以下にとどまっています。

 

「立派な家はあるが現金収入が少ない」というアンバランスな資産状況が、シニア層をリバースモーゲージへと向かわせる背景にあります。しかし、将来の金利変動リスクなどを十分に理解しないまま利用すれば、節子さんのように想定外の負債を抱え込み、結果として子世代の老後をも脅かす「連鎖破綻」を招きかねないのです。

 

リバースモーゲージは、高齢者が住み慣れた家で暮らし続けるための有力な選択肢です。一方で、変動金利型の商品では、金利上昇、不動産評価額の下落、そして想定以上の長寿による借入残高の増加というリスクがあります。契約内容によっては、追加融資が受けられなくなったり、相続時に家族へ影響が及んだりすることもあります。だからこそ、契約前には商品の仕組みを十分理解し、家族とも情報を共有しておくことが欠かせません。

 

節子さんは今もその家で暮らしています。しかし、自宅はいずれ売却されることが決まっています。

 

「母は安心して老後を迎えたかっただけなんです。でも、制度を十分理解できないまま契約してしまった。その代償を、家族全員で背負うことになるなんて思いもしませんでした」