老後不安に備えて資産形成に励み、念願の目標額を達成する――しかし、将来の安心ばかりを追い求めるあまり、知らず知らずに犠牲にしてしまっていることも。ある52歳男性の事例を通して、資産形成のあるべき姿を考えます。
「老後資金3,000万円達成したぞ!」52歳会社員歓喜するも、50歳妻から「離婚」を言い渡された残念な理由 ※写真はイメージです/PIXTA

久々にケーキを買って帰ったが…

資産3,000万円を達成したその日。山本さんはケーキでも買って帰ろうと思い、珍しく駅前の洋菓子店に立ち寄りました。帰宅すると、食卓には夕食ではなく、一枚の書類が置かれていました。それは緑色の紙。離婚届でした。

 

「もう限界」

「冗談だろ」

「冗談じゃない」

 

恵子さんとのそんな問答が続いたあと、「金融資産が3,000万円超えたこと」「老後は安泰であること」を伝えました。しかし恵子さんは首を振ります。

 

「私は、その3,000万円のために生きてきたわけじゃない」

「あなたは家族を守っていたつもりかもしれないが、私にはお金だけを守っているようにしか見えなかった」

 

山本さんは反論できなかったと振り返ります。その後、夫婦は話し合い、離婚は回避。恵子さんも「本当に離婚するつもりはなかった。ただ本気を見せたかった」とのことです。

 

資産3,000万円は通過点であり、今後も身の丈にあった生活を続けることは重要。ただ過度な節約はやめること、今も大切にすることを確認し合ったと言います。

 

「老後、老後と言ってきましたが、必ず老後を迎えられるわけではない。今も大切にしないと……危うく、家族を失うところでした」

 

金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査2025年(二人以上世帯調査)』によると、山本家と同収入層(年収1,000〜1,200万円未満)において、「心の豊かさを実感する条件」として「将来の生活への安心感」(21.4%)や「経済的な豊かさ」(46.4%)を挙げる人がいる一方で、「家族とのきずな」を重視する人も32.8%に上ります。

 

老後不安から徹底した蓄財に励む姿勢は立派ですが、その過程で「今」の家族の笑顔や絆を失っては本末転倒。過度な節約に陥らず、時には思い出作りに投資するなど、将来の安心と現在の充実のバランスを取ることが、真に豊かな人生を築くカギといえるでしょう。