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老後資金達成の日
「やっとここまで来た」
都内のメーカーに勤務する山本浩一さん(52歳・仮名)。スマートフォンの証券口座を見ながら静かに息を吐きました。
評価額は30,128,000円。
新NISA口座と特定口座、iDeCoを合わせ、目標だった金融資産3,000万円を初めて超えた瞬間でした。年収は約900万円。妻の恵子さん(50歳・仮名)はパート勤務で年収約160万円。大学生の長男と高校生の長女がいます。住宅ローン残高は約980万円。毎月の返済は92,000円。決して裕福とは言えませんが、山本さんは8年前から徹底した支出管理を続けてきました。
昼食は毎日手作り弁当。
飲み会はすべて断る。
スマートフォンは格安プラン。
車は所有せず、自転車で通勤。
旅行は5年間ゼロ。外食は誕生日だけ。それも家族4人で5,000円以内と決めていました。
「今を我慢すれば、老後は自由になる」
その考えを家族にも繰り返し話していました。
総務省『家計調査(貯蓄・負債編)2025年』によると、山本家と同水準の世帯年収(1,000〜1,250万円)である二人以上の勤労者世帯における平均貯蓄額は2,346万円、負債額は平均1,264万円です。山本家の金融資産3,000万円、住宅ローン残高約980万円という家計状況は、同収入層の平均と比較しても極めて優秀な成果といえます。
しかし、この突出した資産形成の裏には、外食や家族旅行といった思い出作りを犠牲にするほどの徹底した我慢がありました。ある土曜日。家族でこんなやり取りがありました。
恵子さんと長女が「今度の休みに、家族で温泉でも行かない?」と切り出したのです。普段仕事で忙しい山本さん。夏季休暇は、家族で一緒にいられる数少ないチャンスです。しかし山本さんは首を横に振ります。
「宿泊代だけでも5万円くらいかかるだろう? それなら、そのまま投資したほうがいい」
高校生の長女が「今のうちだよ、家族で旅行なんて」と反論しますが、山本さんは「社会人になってもいける」とピシャリ。ここで会話は終了しました。
こんな問答はいつものこと。夕食の献立でも同じでした。
「今日はお刺身にしようと思うんだけど」
「特売の鶏むね肉で十分」
「でも、たまには……」
「その『たまに』が年間では何万円にもなる」
家計簿には細かな数字が並びます。節約した分、投資には毎月22万円を回していました。悪意はまったくありません。家族の老後を守る――ただそれだけです。