良かれと思った親心が、時に思わ思わぬ溝を生んでしまうことがあります。子や孫を温かく迎えたいという配慮が、知らず知らずのうちに子世代の負担に――なぜ互いを思いやる善意がすれ違ってしまうのでしょうか。ある夫婦の事例を通し、「帰省ハラスメント」について考えます。
「お盆はいつ帰ってくるんだ?」の問いかけに、長男まさかの激怒…〈年金月27万円〉68歳夫婦が知らずに踏んだ「想定外の地雷」 ※写真はイメージです/PIXTA

金銭的な「負担ゼロ」がプレッシャーになることも

そんな習慣化した帰省が、今年の夏は取りやめになったといいます。

 

ある日の長男からの電話。そろそろ夏の予定を決めたいと、開口一番「いつ、帰ってくるんだ?」と聞くと、「その言い方、やめてくれないか」「今年は帰らないから」と、怒りを含んだ声が返ってきました。

 

意味が分からず、言葉を失う和夫さん。このときの電話はそのまま終わってしまいましたが、後日改めて話し合い、言葉の真意を知ることになります。

 

「ずっと負担だった、と言われました」

 

正月、盆と、年2回帰省するのが習慣となっていた長男。帰省に関わるお金をすべて出し、こちらからのお金を受け取らないため、余計に断ることができなかった、相談することさえも悪いことのように感じるようになった――というのです。

 

「根底には、期待を裏切ってはいけないという親思いのやさしさがあったようです。しかし、いつの間にか追い詰めてしまったようですね」

 

今年のお盆、他の用事とかぶってしまい相談をしようと電話をしたところ、無邪気に「いつ来るんだ?」とワクワク感全開で言われたものだから、何かがプチっと切れて、怒りが込み上げてきた――という顛末でした。

 

「最近は『帰省ハラスメント』って言葉もあるみたいですね。いつの間にか長男たちにプレッシャーをかけていたんですね」

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、遠方に住む結婚した息子(遠居有配偶子・男性)に対し、親(有配偶の母親)が子どもが18歳になって以降に「孫に関わる経費」の援助を行った割合は39.8%に上り、「支援なし」は19.0%にとどまるなど、約8割が何らかの経済的支援を行っています。

 

佐藤さんのように、子や孫への愛情から金銭的負担を一切かけまいと手厚くもてなす親は多いですが、その「見返りを求めない一方的な厚意」が、かえって子世代には「断れない」「期待に応えなければ」という無言のプレッシャーとなるケースも少なくありません。

 

「私たちも、少し、無理をしていた部分もある。これからは無理をせず、付き合いを続けていこうと思います」