(※写真はイメージです/PIXTA)
リノベーション団地で見つけた居場所
そんなある日、SNSを眺めていると、「築40年の団地が人の集まる場所に生まれ変わった」という記事が目に留まりました。民間企業がリノベーションした団地で、カフェやシェアキッチン、コワーキングスペースが整備され、住民以外も参加できるイベントが定期的に開かれていると紹介されていました。
「暇つぶしになるかもしれない」
そんな軽い気持ちで、休日に電車に乗りました。駅から歩いて10分ほど。団地の広場では、小さなマルシェが開かれていました。キッチンカーが並び、親子連れや高齢者、若い夫婦が思い思いに過ごしています。
「ここ、本当に団地なのか」
小林さんはそう感じたといいます。団地内のカフェでは読書会が開かれていました。参加費は500円。住民だけでなく、地域外からの参加も歓迎されていました。初めて参加した小林さんは、好きな本を紹介しただけでした。
帰り際、一人の男性が声を掛けます。
「来月もありますよ。よかったらまた来ませんか」
会社を辞めてから、「また来てください」と言われたのは初めてでした。その後、小林さんは月に2回ほどイベントへ通うようになります。コーヒーを飲みながら雑談をし、読書会や映画上映会に参加するようになりました。
会社を退職して半年後、タワーマンションの更新時期がきました。家賃は月25万円。年間300万円です。一方、団地のイベントへ通う交通費は往復1,200円ほど。気付けば毎月のように電車に乗っていました。「それなら、近くに住んでしまえばいいのではないか」と考え、団地から徒歩圏内にある築18年の賃貸マンションへ住み替えることを決めます。
家賃は月11万8,000円。生活費は年間約300万円まで下がりました。資産1億6,000万円は引き続き運用を続け、生活費は運用収益の範囲内で十分に賄えています。また小林さんは団地で開かれるスマホ・パソコン相談会を月に数回手伝っています。
「参加者は高齢者が中心ですが、自分の名前を覚えてくれて。相談会以外でも声をかけられることがあります」
内閣府『令和7年 人々のつながりに関する基礎調査結果』によると、地域活動や趣味の集まりなどに「特に参加はしていない」人のうち、孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた割合は6.5%で、「いずれかの活動に参加している」人(2.1%)の約3倍に上ります。
小林さんのように、FIREによって仕事関係のつながりを失った場合、地域社会との接点を持たない限り、孤立を深めるリスクが高まります。単に資産を形成して自由な時間を得るだけでなく、地域コミュニティへ参加し、他者から名前を呼ばれるような「役割」や「居場所」を通信で見つけることが、豊かなセカンドライフを送るための鍵となるのです。