老後の不安といえば「お金」が真っ先に挙がりがちですが、『令和7年版高齢社会白書』の調査では、60歳以上の65.9%が現在の経済的な暮らし向きについて「心配がない」と回答しています。しかし、金銭的なゆとりが必ずしも幸せな老後を約束するわけではないようです。事例をご紹介します。
「お金で孫を釣る気はない」年金月35万円・貯金4,000万円の71歳元大企業部長が陥った老後孤立…世界で最も愛する孫と〈絶縁〉のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

息子を飛ばして「孫とだけ繋がる」ことはできない現実

ユウジさんは「昔あんなに自分を慕ってくれたのだから、孫も本当は会いたがっているはずだ」と過去の思い出にすがっています。しかし、現実はそう甘くありません。

 

幼い子どもにとって、世界は親を中心にして回っています。息子との絶縁状態をそのまま放置したまま、孫とだけ良好な関係を保つことなど不可能なのです。また、お正月や誕生日になってもなんの便りも届かず、親が祖父の話題を避けている状態が続けば、子どもにとっても祖父は「昔会っただけの遠い親戚」になっていってしまいます。

 

ユウジさんが「自分からは歩み寄らない」「お金や贈り物に頼らない」と意地を張り続けているあいだにも、息子との溝は深まり、それに伴って孫との時間も二度と戻らない形で失われ続けていました。

お祝いや手土産は、歩み寄るためのきっかけ

今回の事例から学べるのは、家族間におけるお年玉やお祝い金の「本当の役割」です。ユウジさんのように「お金や物で孫の気を引くのは品がない」と考えてしまう気持ちも、一つの価値観かもしれません。しかし、お祝いや手土産は、決して買収や機嫌取りの道具ではないでしょう。

 

それは、「あなたの家庭や暮らしを遠くから見守り、応援しているよ」という気持ちを、重荷にさせずに伝え、関係をスムーズに保つための潤滑油です。

 

息子との絶縁を解消するためには、父親としてのプライドを一度横に置き、息子の選択した生き方や現在の暮らしを「ひとつの独立した家庭」として認める姿勢が欠かせません。お年玉やお祝いという季節の行事は、気まずくなった親が「息子の家庭を尊重し、歩み寄る」ための絶好の口実になり得たはずです。

 

「自分からは歩み寄らない」「お祝いという口実も使わない」と頑なに拒んでしまえば、引き換えに得られるのは自分のプライドだけであり、本来一番欲しかった「大切な家族との穏やかな時間」は失われていくばかりです。

 

形にこだわりすぎず、お年玉やちょっとした季節の便りを「息子の家庭へ声をかけるための自然なツール」として活用してみること。そんな小さな柔軟性を持つことが、こじれてしまった親子関係、そして孫との距離を再び引き寄せるための第一歩になるのかもしれません。

 

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