(※写真はイメージです/PIXTA)
古い団地の最上階の誤算
移り住んだのは、まだ寒さが身に染みるときもある春先。風通しがよく、日当たりも良好だったこともポイントだったといいます。
「冬は暖かそうだし、洗濯物もよく乾く。眺めもいいし、悪くないと思ったんです」
ところが、最初の夏で状況は一変しました。7月上旬の午後、室温計は35℃を表示。エアコンをつけて1時間たっても、30℃を下回りません。天井を触ると熱を持っており、夜になっても部屋が冷えませんでした。
築年数の古い公営団地では、断熱材が十分に入っていない物件が少なくありません。特に最上階は、屋根が受けた直射日光の熱が天井から室内へ伝わりやすく、コンクリートが蓄熱するため夜間も温度が下がりにくい傾向があります。
高橋さんは当初、電気代を気にしてエアコンを28℃設定にしていました。しかし、7月の請求額は1万4,800円。戸建て時代の約2倍です。
「家賃を抑えたのに、その分、電気代が考えられないほど高くなってしまった」
さらに健康のためと選んだ4階のロケーションも、夏場にはマイナスに働きます。途中で息が切れ、2階と3階の間の踊り場で休むことも増えました。階段を上がった直後に強いめまいを感じ、その場に座り込むこともありました。
「ダメだ、意識が遠のいていく……このまま誰にも気づかれずに倒れたら、死ぬかもしれない」
救急車を呼ぶほどではありませんでしたが、熱中症の初期症状と診断されました。
高橋さんは慌てて対策を始めます。窓には遮熱フィルムを貼り、外側によしずを設置。エアコンと扇風機を併用し、冷気を循環させるようにしました。費用は合計で約6万円。それでもやっと30℃を下回る程度にしかならなかったといいます。
「夏場の暑さは想定外でしたね。冬の寒さは厚着をして布団をかぶればいいけれど、暑さはどうしようもないですね。同じ団地でも2階なら、ちょっとは違うみたいですけど」
消防庁の発表によると、今年7月6日から12日の間、全国の熱中症による救急搬送は4,580人。そのうち「高齢者」は2,827人と、6割を超えています。また搬送者全体のうち、発生場所で最多なのは「住居」で4割弱にもなります。
高橋さんの事例のように、築年数の経った住宅の場合、家賃の安さや日当たりの良さといった表面的な条件だけでなく、建物の構造や断熱性、加齢に伴う身体への影響まで見据えて検討することが欠かせません。「生活費の削減」を優先するあまり健康や安全を損ねてしまっては本末転倒。老後の住み替えにおいては、四季を通じた住環境のリスクをしっかりと見極める姿勢が求められそうです。