現役時代に購入し、ようやく住宅ローンを完済したマイホーム。「これで一生住む場所には困らない」と安心している人は多いかもしれません。しかし、子どもが独立して夫婦二人だけの生活になると、マイホームはかえって日々の生活の負担になりがちです。かつては「終の棲家」と信じて疑わなかったマイホームが、老後の足かせになってしまうケースが増えています。FPの川淵ゆかり氏のもとには、シニア世代から「老後の住まい」に関する相談が多く寄せられます。今回は、東京郊外の戸建て住宅に住むAさん(70歳)の事例をご紹介しましょう。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
手入れできない庭も、娘のピアノも、マッサージチェアもみんな手放します…ローン完済の2階建てマイホームを去る70歳夫婦。40歳娘の提案で、老後にあえて“手狭な賃貸”を選んだ理由【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

娘からの新たな提案

それから半年ほど過ぎた現在、娘のほうから「私たちの家の近くに2DKの戸建ての賃貸物件があるから、そこに引っ越してこないか」と連絡があり、Aさん夫婦は転居を検討中です。

 

現在の住まいは、立地条件がいいため、売却すれば3,500万円程度にはなる見込みです。

 

「転居先はいまの家より狭いので、寂しいですが、この際、みんな手放そうと思います」。Aさんはそう決心しました。

 

引っ越しを機に、“断捨離”を進めることができますし、転居先の2DKという間取りは、将来夫婦のどちらかが寝たきりになっても、目が行き届き介護がしやすい広さです。バスを乗り継がないと病院には行けませんが、「いざとなったら私が送り迎えをするから」と娘がいってくれています。

 

以下の表は、Aさん夫婦の「これまでの住まい」と「引っ越した場合」との費用の比較をまとめたものです。

 

・ケース1:現在のまま、持ち家に住むケース

・ケース2:娘夫婦の近くの戸建て賃貸に引っ越すケース

・ケース3:ケース2のあとに、老人ホームなどに入居するケース

 

出所:筆者作成
[図表]これまでの住まいと、引っ越した場合の比較 出所:筆者作成

 

「持ち家」が正解とは限らない

Aさんのケースからもわかるように、長寿化が進み、子世代との別居が当たり前になった現代において、住まいは一生に一度の買い物ではなくなってきています。

 

子どもが同居して親の面倒をみてくれれば、家や家財などはそのまま引き継がれていくでしょう。しかしいまは、それぞれが住まいを持ち、独立して生計を立てているケースが大半です。だからこそ、リフォームや老後の住まい(終の棲家)など、老後の生活まで考えた計画を夫婦で立てないといけません。

 

結婚したり、子どもができたりしたタイミングで家を購入する人は多いですが、その際に無理をしてしまうと、その後のリフォーム資金や老人施設や介護施設での入居費用などが大きく圧し掛かってきます。

 

物価高もまだまだ続きそうですし、社会問題化する「空き家問題」も無視できない時代ですから、早めに生涯の暮らしを考えた住まいについて考えてみましょう。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表

 

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