(※写真はイメージです/PIXTA)
子どもを頼れると思っていた
「毎月は暮らせても、大きな出費が来た瞬間に崩れてしまう」
現在の状況をそう表現する清水さん。そこで、口にしなくても頼りにしていたのが、都内で妻と中学生の子ども2人で暮らす、45歳の長男です。年に数回は顔を合わせ、親子仲が悪いわけではありません。だからこそ、清水さんは心のどこかで「本当に困ったら息子が相談に乗ってくれる」と思っていました。
転機は団地の大規模修繕でした。管理組合から、一時金として35万円の負担が必要になる可能性があると説明を受けます。預金から払えなくはありませんが、これから介護や病気があればどうなるのか、不安が消えませんでした。
数日悩んだ末、長男へ電話をかけました。
「お金を出してほしいわけじゃない。ただ、この先どうしたらいいか、一緒に考えてほしくて」
沈黙のあと、返ってきた言葉は予想とは違いました。
「自分の生活なんだから自分で何とかしてほしい」
「自分も住宅ローンが3000万円以上残ってる。子どもの教育費もある」
「これ以上負担を増やさないでほしい」
清水さんは返す言葉がありませんでした。電話は5分ほどで終わりました。
「息子は冷たい人間じゃないんです。でも、あの一言で『何かあれば息子がいる』というのは、甘い考えだったことがわかりました」
後日、長男から改めて連絡がありました。
「市役所とか地域包括支援センターに相談してみたらどうか」
「親父が何かあったら駆け付ける。でも生活までは支えられない」
その言葉には突き放す響きもありましたが、一方で現実も含まれていました。親を助けたい気持ちはあっても、自分の家庭を守るだけで精いっぱいだったのです。
厚生労働省『2025年(令和7年)国民生活基礎調査』によると、児童のいる世帯(子育て世帯)の1世帯当たり平均借入金額は1226.2万円に上り、全世帯平均(362.5万円)を大きく上回ります。さらに、日々の生活が「苦しい(大変苦しい・やや苦しいの合計)」と感じている世帯の割合も61.5%に達しており、現役世代の家計に決して余裕はありません。
親を気遣う気持ちはあっても、自身の住宅ローンや教育費の負担から親への経済的支援が困難な子世代は少なくありません。「いざとなれば子が助けてくれる」という前提に頼るのではなく、親自身が家計を見直し、利用できる地域の制度や住居の選択肢を主体的に検討していくことが、自立した老後を生き抜く基本といえるでしょう。
清水さんも自分の生活は自分で守らなければならない現実を受け止め始めました。自治体の高齢者相談窓口で家計を見直し、使っていない生命保険を解約しました。固定費を月1万2000円ほど削減できました。さらに、自宅を売却してサービス付き高齢者向け住宅へ住み替える可能性についても情報を集めています。