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管理職経験は評価されるが…
最終的に藤原さんは早期退職を選びました。年下上司との面談から3ヵ月後のことです。
役職定年後に会社へ残れば、年収は1,000万円前後を維持できると思っていました。しかし、粘りに粘っても、結局退職するしかないことはわかっていました。それであれば自分からスパッと辞めたほうが得だろう――そう判断したのです。
実際に上乗せされた退職金は約2,000万円。住宅ローンを完済しても手元には老後資金が残る。「今辞めても何とかなる」。そう考えたことも、早期退職を決断した理由の一つでした。
退職後、まず相談したのは転職エージェントでした。さらに取引先やOBにも連絡しました。紹介された求人は、想像よりはるかに少なかったといいます。
「管理職経験は評価されます。ただ、募集自体がほとんどありません」
同じような説明が続きました。半年ほど活動しても、希望に近い案件は決まりません。
そこで初めて、藤原さんはハローワークにも足を運びました。受付で番号札を受け取り、順番を待つ。周囲を見渡すと、自分より若い人もいれば、同年代もいました。
「まさか、自分がここで職を探すとは思ってもいませんでした」
ここで紹介された求人の多くは年収400万~600万円台でした。担当者は丁寧に求人票をめくりながら尋ねます。
「営業経験とのことですが、ご自身で新規開拓はできますか」
「プレイングマネジャーとして営業活動も担当できますか」
「部下がいない環境でも問題ありませんか」
会社名や肩書よりも、現場で何ができるのか。そこだけが繰り返し確認されました。大手の部長だったプライドはズタズタに引き裂かれました。「お前はこの市場では何のニーズもないよ――」そう言われている気がしたのです。
内閣府『令和8年版高齢社会白書』によると、職業に関する能力を自発的に開発・向上させるための「自己啓発」を行っている割合は、50代で31.4%、60歳以上になると20.6%にまで低下します。多くの人が社外で通用するスキルの学び直し(リスキリング)を怠ったまま、厳しい労働市場に放り出されているのです。
「大企業の部長」という過去の栄光は、一歩外に出れば通用しません。ジョブ型雇用が広がり会社依存がリスクとなる今、現役時代からの戦略的なスキルの棚卸しと継続的な自己啓発が、人生後半のキャリア転落を防ぐために重要です。