内閣府の「高齢者の経済生活に関する調査」によれば、親と同居する高齢者の49.8%が「子や孫の生活費を負担している」と回答しました。十分な老後資金がないまま子の生活を支え続ければ、将来介護や医療費が必要になった際に老後資金がショートし、「親子共倒れ」に陥る可能性も……。アルバイト生活を続ける39歳の息子から「ずっと実家にいる」と宣言された66歳父親の事例を通じて、親子の同居に潜むリスクをみていきましょう。
「もう養いきれない…」貯金1,200万円・66歳父が凍りついた、39歳息子の〈実家永住宣言〉…年金暮らし直前、「親子共倒れ」の恐怖から下した決断 (※写真はイメージです/PIXTA)

「出ていってくれ」とはいえず…息子の“実家永住宣言”に老後破産の恐怖を覚えた夜

ある日の夕食時、トモキさんが何気なく口にした言葉に、ヒロシさんは凍りつきます。

 

「俺、このままここに住むよ。別に今の生活で困ってないし、それに父さんを一人にさせたくないしな」

 

ヒロシさんは、その場では言い返せませんでした。しかし、その夜、老後資金が底をつくかもしれない恐怖を初めて感じたといいます。それまで「いつか自立するだろう」と淡い期待を抱いていました。そんななか告げられた、トモキさんの“実家永住宣言”。

 

「出ていってくれ」といえば親失格なのではないかと、ヒロシさんは悩み続けましたが、同時に体力的な限界も感じ始めていました。仕事から帰宅しても、食事の支度や掃除の多くはヒロシさんが担っています。

 

「このまま70代になっても、息子を養い続けるなんて絶対に無理」という危機感が、日に日に強まっていきました。

「これ以上は養いきれない」…親子共倒れを危惧する父が下した決断

数日後、ヒロシさんは意を決してトモキさんに話を切り出します。

 

「悪いが、もうこれ以上はお前を養いきれない」

「なんだよ急に。たったひとりの息子を見捨てるっていうのかよ?」

 

トモキさんは、最初は激しく反発しました。しかし、ヒロシさんは初めて本音をぶつけました。

 

「このままじゃ、いずれ親子共倒れになる。俺の老後資金だって無限じゃないんだ、わかってくれ」

 

沈黙が続いたあと、トモキさんは不機嫌そうに自室へ戻っていきました。その後もしばらく険悪な空気は続きましたが、ヒロシさんは考えを変えませんでした。家に入れる生活費の金額設定、今後の仕事探し、期限を決めた自立準備。曖昧だった親子関係に、少しずつ線引きを始めたのです。

 

「お互いのために、しっかり将来のことを考えて動くときが来たのかもしれませんね」

 

親子で同居すること自体が問題なのではなく、「いつか自立してくれる」という淡い期待を抱いたまま、時間だけが過ぎていくことがリスクなのです。66歳を迎えたヒロシさんにとって、“息子を支え続ける父”でいることと、“自分の老後を守ること”は、両立できない段階に来ていたため、苦渋の決断を下すほかなかったのです。

 

[参考資料]

・内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」

・内閣府「令和7年版 高齢社会白書」

 

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