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65歳で気づいた資産減少と年金生活
退職から5年。加藤さんが65歳になった時、状況は大きく変わっていました。退職時に約4,500万円あった金融資産は、約2,200万円まで減少していました。この時、初めて将来の不安を具体的に感じたといいます。
「65歳から受給する夫婦の年金額は月約27万円。手取りでは約23万円程度です。この生活を続けていると、月10万〜20万円の取り崩しとなる。いつまでもつか……計算するのも嫌になりました」
総務省『家計調査 家計収支編(2025年)』によると、65歳以上の無職夫婦世帯における1か月の可処分所得は221,544円です。一方、消費支出は263,979円となり、毎月42,434円の赤字が生じています。加藤さんの不安は杞憂ではなく、平均的な生活を送るだけでも貯蓄の取り崩しが避けられない厳しい現実が窺えます。
加藤さんの場合、住宅ローンは完済したものの、最近は管理費や修繕費が高くなり、固定費が増えています。将来的には医療費や介護費用が重くのしかかるのは既定路線です。考え始めると、不安ばかりが広がりました。
この不安を解消するには働くしかない。こうして向かったのは、近所のハローワークでした。
職歴には自信がありました。日本人なら誰もが知る大手メーカー勤務歴、営業部長経験、長年の法人営業経験。
「営業なら、まだ自分の経験を活かせると思っていました」
しかし、窓口で希望条件を伝え、紹介された求人票を見た瞬間、言葉が出ませんでした。仕事内容は、企業向け営業ではなく、事務補助業務。給与は月18万円。賞与なしで年収216万円。
「年収1,500万円だった自分が、月18万円の仕事を探している。その現実を受け入れるのがつらかったです」
加藤さんは、窓口担当者から説明を受けました。
「ご経歴が立派でも、65歳以降の採用では現在できる仕事や勤務条件が重視されます」
今の自分には月収18万円の価値しかない——そう言われたのも同然でした。現実に抗い、より高給を狙うか、それともプライドを捨て、現実を受け入れるか。加藤さんが選んだのは後者でした。
現在、加藤さんは週4日の事務サポート業務に就いています。月収は約16万円。年金と合わせた手取り収入は月約39万円です。生活費は月30万円以内に抑えています。車を手手放し、保険を見直しました。以前のような旅行や外食は減りました。しかし、家計は安定しています。
「もっと早く準備しておけばよかったと思います。60歳になった時ではなく、50代から考えるべきでした」
現役時代の栄光やプライドにしがみつかず、いかに早く「老後の現実」と向き合えるか。豊かなセカンドライフへの第一歩は、定年を迎える前の50代から、家計とライフプランを冷徹に見直す覚悟を持つことにあります。