「母親が生活に困らないように」と、毎月10万円の仕送りを続けていた53歳の独身会社員・健一さん。しかし、実家へ帰省した際に手にした母親の貯金通帳には、目を疑うような不可解な出金履歴が並んでいました。親を想う優しい気持ちが引き起こした、まさかの悲劇。温かな仕送りの裏で、一体何が引き起こされていたのでしょうか。
「母さんのために送っていた10万円、どこに消えた?」53歳会社員長男、年金月10万円・79歳母の貯金通帳に記された不可解な出金履歴に絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

通帳に並んだ「まさかの送金記録」

実家で一人暮らしをする母を支えるために、月10万円の仕送り。しかし、その気持ちが裏切られる出来事が起こります。 ある日、聡子さんから健一さんに電話がありました。 「銀行の手続きが少し分からなくなってきたから、今度帰ってきた時に見てほしい」 そう頼まれ、健一さんは久しぶりに関西の実家へ帰省しました。母親の了承を得たうえで、今後の生活費や医療費を確認するため、預金通帳を見ることになりました。そこで、健一さんは違和感を覚えます。

 

毎月10万円の仕送りとは別に、複数の振込履歴が残っていました。振込先は、妹の由美さん(49歳・仮名)でした。金額は毎月5万~10万円で、1年以上続いていました。さらに、まとまった現金の引き出しもありました。 健一さんが母親に確認すると、母親は少し間を置いて答えました。

 

「由美のところも大変だから、少し助けていた」

 

由美さんは、実家から車で10分ほどの場所に住んでいます。夫と高校生の子ども2人の4人家族です。夫は会社員ですが、数年前から収入が減少しました。以前は世帯年収約600万円でしたが、現在は約450万円だといいます。住宅ローンは約2000万円残っています。子どもの教育費や住宅費が重なり、家計に余裕はありませんでした。

 

そのような事情を耳にしていたものの、妹は嫁いだ身。経済的に困っているなら、まず夫側の家族に相談するだろう――そう勝手に考えていました。しかし健一さんが送っていた仕送りは、妹家族の支援にまわっていたのです。

 

「妹の家庭が大変なのは分かります。でも、自分は母の生活費として送っていました。目的が違っていたことに驚きました」

 

この事実に、由美さんはこう話したといいます。

 

「母が助けたいと言ってくれたので、甘えてしまいました」

 

聡子さんも、健一さんに悪いことをしているという意識はありませんでした。

 

「健一は一人だから大丈夫だと思っていた」

 

健一さんはその言葉に違和感を覚えます。

 

「結婚していないから余裕があると思われていたのかもしれません。でも、独身でも老後への不安はあります」

 

金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査2025年(単身世帯調査)』によると、50代の単身世帯で老後の生活が「心配である」と答えた割合は82.8%に上ります。また、同調査で50代が考える「年金支給時に最低準備しておく金融資産残高」の平均は2144万円です。健一さんは現在1500万円の蓄えがありますが、この平均額には届いていません。独身だからといって決して余裕があるわけではなく、将来への備えと親への思いの間でギリギリの支援を行っていたといえるでしょう。