夫婦共働きが当たり前となった現代。万が一、現役時代にパートナーを亡くした際、残された家族の生活を支える命綱となるのが「遺族年金」です。しかし、日本の公的年金制度には、知らなければ老後設計が根本からひっくり返るような落とし穴が存在します。「一生もらえると思っていたのに……」と、多くのキャリア女性が涙する「支給停止」の現実とは。
〈月収40万円〉45歳キャリア妻、47歳夫の急逝から息子2人を育て上げ、ようやく迎えた65歳で涙する「唖然の遺族年金額」

65歳になった元キャリア妻が絶句…送られてきた通知書に書かれた「支給ゼロ」の文字

しかし、65歳を迎えたとき、状況が一変します。彼女自身の「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の受給がスタート。彼女も大卒の平均的なキャリアを積んできたため、自身の老齢年金は合わせて月額約16.3万円(基礎年金+厚生年金約9.5万円)になる計算でした。

 

「これに、これまでもらっていた夫の遺族厚生年金がプラスされれば、老後はかなり余裕ができるはず」

 

そう期待していた彼女の元に届いたのは、信じられない通知でした。なんと、これまで家計を支えてくれていた夫の遺族年金が「0円(全額支給停止)」になっていたのです。

 

ここには、日本の年金制度が定める「65歳以上の併給調整」という複雑なルールが関係しています。65歳以上になり、自分の「老齢厚生年金」と夫の「遺族厚生年金」の両方を受け取る権利がある場合、国は「自身の老齢厚生年金を優先して受給しなければならない」と定めています。そして、遺族厚生年金の額が自分の老齢厚生年金を上回っている場合のみ、その「差額分」だけが上乗せして支給される仕組みになっているのです。

 

彼女の場合、現役時代にキャリアを重ねて相応の収入(月収40万円)があったため、自分自身の老齢厚生年金額(約95万円)のほうが、夫の遺族厚生年金額(約76万円※計算ルールによる調整後)よりも高くなってしまいました。その結果、「遺族厚生年金>老齢厚生年金」の算式が成り立たず、夫の遺族厚生年金は全額が支給停止となってしまったのです。

 

結果として、彼女が65歳以降に受け取れるのは、自分自身が働いて納めてきた老齢年金の月額約16万円のみとなりました。独り身の高齢者が暮らしていくには決して生活できない額ではありません。しかし、「一生自分を支えてくれる」と信じ込んでいた夫の形見のような年金が、65歳になった瞬間に突然消滅したショックは計り知れないものでした。

 

「どこかで夫が支えてくれている、という思いがあったのですが、それもなくなってしまったんですね。結構な喪失感でした」

 

実は、彼女を支えた遺族年金制度自体も、現在大きな転換点を迎えています。

 

2028年4月に施行予定の年金制度改正により、遺族厚生年金の男女差が是正され、60歳未満で配偶者を亡くした場合、男女ともに「原則5年間の有期給付」へと見直されるのです。彼女のように18歳未満の子どもがいる場合は、子どもが18歳年度末を迎えるまで従来通り受給でき、その後さらに5年間の有期給付が続きますが、かつてのように「一生涯のサポート」を前提とする制度ではなくなります。

 

遺族年金は今後、「一生の保障」から、「配偶者の死後、男女問わず生活を再建するための5年間の手厚い給付」へと、その役割を大きく変えていくことになります。公的年金制度が変化するなか、改めて自分自身の老後と「もしも」への備えを見直す時期に来ているといえるでしょう。