親心からの「良かれと思って」の言動が、気づかぬうちに子世代の負担となり、深刻な親子関係の亀裂を生んでしまうケースもあります。ある親子の事例から、今どきの親子間の適度な距離感を考えていきます。
「もう、実家には帰らないから」年金月15万円・65歳主婦、39歳の娘の絶縁宣言に絶句。孫の顔すら見られなくなった「不用意な一言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

娘が抱えていた不満

絶縁を告げられる数週間前、美智子さんと由佳さんは、孫の誕生日をめぐって口論になりました。美智子さんは、孫に1万円の商品券を渡しました。すると由佳さんから「あげすぎだからやめて」と言われたそうです。美智子さんは納得できませんでした。

 

「喜んでもらいたかっただけなのに」

 

そう反論しました。しかし、由佳さんが問題にしていたのは、お金ではありませんでした。

 

「何でもお母さんが決めようとするところが本当に嫌だった」

 

娘はそう訴えました。さらに由佳さんは、現在の不満の根底にある、過去の決定的な出来事も挙げました。それは数年前、出産後の育児で最も悩んでいた時期に、美智子さんから言われた言葉でした。

 

「私の時代はもっと大変だった」

 

美智子さんにとっては励ましのつもりでしたが、由佳さんにとっては「今の苦しみを否定された」と感じる、深く傷つく一言だったのです。その時に生じた心の亀裂が埋まらないまま、今回の誕生日の一件でついに限界を迎えたのでした。

 

現在、美智子さんと由佳さんは連絡を取っていません。孫の写真も送られてこなくなりました。冷戦状態が続いているのです。ただ、娘を責める気持ちには、少しずつ変化が生じているといいます。

 

「助けているつもりでも、相手が望んでいなければ押しつけになるんですね」

 

そう話します。国立社会保障・人口問題研究所の『第7回全国家庭動向調査』(2022年)によると、妻が「出産や育児で困ったときにもっとも重要な相談相手」は、2018年調査までは「親(48.9%)」が1位でしたが、2022年には「親」が38.5%に減少し、「夫」が48.7%と逆転しました。

 

また、「子どもの教育・進路」に関する相談相手は「夫」が87.7%に対し、「親」はわずか4.2%にとどまっています。現代の子育ては夫婦中心となっており、親(祖父母)への依存度は下がっています。祖父母の良かれと思ったアドバイスも、子世代のニーズと合わなければ負担になりかねません。夫婦の育児観を尊重し、求められた時にサポートする適度な距離感を保つことが、円満な関係を築く鍵といえるでしょう。