厚生労働省『2024年 国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯の平均所得は314万8,000円で、そのうち公的年金・恩給が所得の約63%を占めています。限られた収入で住居費や生活費を維持する高齢者は少なくありません。そんな社会課題に直面している一つの事例を通して、その実態をみていきます。
ご近所さんを気にするのは疲れました…〈年金月25万円〉70代夫婦、30年以上住み続けた戸建てを売却。庭も車もない「公営団地暮らし」で見つけた幸せ (※写真はイメージです/PIXTA)

老後は持ち家か、それとも賃貸か

引っ越して半年。夫婦の生活は大きく変わりました。以前は庭の手入れや家の修繕に追われていた時間が減り、「ご近所さんが見ているから」という見栄もなくなりました。駅から離れたことで、外食も減りました。

 

「昔は、ご近所さんの目が気になって、家や庭、車をきれいにしたり、付き合いにもお金を使ったり。でも、自分たちが本当に必要としていたものは違ったんですね」

 

一方で、不安がなくなったわけではありません。公営住宅では建物の老朽化もあります。2階とはいえ、階段の上り下りは、今後の身体状況によって負担になる可能性もあるでしょう。完全に今の生活のほうがいい、とは言えない部分もあるのです。

 

老後の住まい選びでは、「持ち家か賃貸か」という単純な比較だけでは判断できません。家の広さ、地域との付き合い、維持費、移動手段――現役時代には気にならなかった条件が、年齢を重ねることで大きな負担になることがあります。

 

安藤さん夫婦が優先させたいのは、自分たちが無理なく暮らせるかどうかです。

 

「何でも一長一短ですね。以前の住まいが恋しくなることもあります」と徹さん。それでも身の丈にあった住まいがもたらす安心感は、何にも代えがたいといいます。