まさか自分の家庭に「大黒柱の急死」という悲劇が訪れるとは――誰も想像していないでしょう。しかし、万が一の事態が起きたとき、残された家族を待っているのは、公的保障の「想像以上の厳しさ」という現実です。ある日突然、愛する夫を失い、さらに経済的な崖っぷちに立たされたひとりのパート主婦と、その娘の葛藤を通じて、「万が一のリアル」を考えます。
50歳で急逝した夫の遺族年金「月14万円」に絶句した48歳パート妻。大学進学を控える高2娘が放った〈想定外のひと言〉に涙した理由

50歳会社員の夫を襲った悲劇

佐藤加奈子さん(48歳・仮名)の日常は、ある1本の電話によって跡形もなく崩れ去りました。


それはいつもの朝。中堅企業で実直に働く夫の正則さん(享年50歳・仮名)を「気をつけてね」と見送ったばかり。しかし昼過ぎ、パート先に警察から「旦那さんが職場で倒れ、病院に搬送されたが意識がない」と連絡が入ったのです。死因は脳梗塞。前日まで元気で、健康診断でも大きな異常がなかった夫が、なぜ――。骨になった夫を前にしても、加奈子さんは現実を受け入れることができませんでした。


しかし、無情にも時間は流ります。葬儀の手続きや四十九日の法要が怒涛のように過ぎ去ったあと、加奈子さんの前に重くのしかかってきたのは、「これからの生活」という現実でした。


正則さんとの間には、大学進学を控えた高校2年生の娘・結衣さん(17歳・仮名)がいます。これから一番お金がかかる時期です。万一の際に加入していた生命保険、死亡の場合に受け取れるのは400万円。あとは、公的年金である遺族年金がありましたが、窓口の職員から聞いた「受給見込み額」は、あまりに少ない金額でした。


「お母様と、お子様(高校生)がおひとりの場合、支給額は月額で約14万円になります」

 

(えっ、たったそれだけ。嘘でしょ……?)

言葉が出ませんでした。東京近郊の賃賃マンションに住む佐藤家にとって、日々の生活を支えるにはあまりに少ないものでした。会社員の夫が亡くなった場合、遺族が受け取れるのは以下の2つです。

 

① 遺族基礎年金

国民年金から支給。18歳到達年度の末尾までの子どもがいる世帯が対象。佐藤家の場合、基本額に子の加算につき、月約8.5万円。

② 遺族厚生年金

厚生年金から支給。夫の生前の「標準報酬月額」や「加入期間」をベースに計算。正則さんのこれまでのキャリアから試算すると、月約5.5万円。

 

これが、長年厚生年金を納め続けてきた正則さんの遺族に支払われる国の保障額でした。加奈子さん自身のパート収入は月約8万円。遺族年金と合わせても月の手取りは22万円ほどです。家賃9万円、光熱費や食費を引けば、毎月カツカツの生活になるのは火を見るより明らかでした。

 

「『まだ40代だし、大きな病気もしていないから大丈夫』と、生命保険の見直しを後回しにしていました。あのとき、本気で考えていれば……」と、加奈子さんは激しい後悔に苛まれます。