内閣府の調査によると、いまや三世代世帯は全体のわずか9.0%。激減した背景には、同居がもたらす新たなリスクがあります。年収880万円の42歳娘が離婚を機に実家へ出戻りした事例から、三世代同居がもたらす「見えない搾取」の実態と、その解決策に迫ります。
「私、帰るね」年収880万円・42歳娘が突然の出戻り。年金月25万円・70代両親を襲う「四六時中孫育て」の地獄 (※写真はイメージです/PIXTA)

40代長女「少しだけだから」

「私、帰るね」

 

3年前の春、佐藤昭さん(74歳・仮名)の長女、美咲さん(42歳・仮名)は、小学3年生と保育園年長の子どもを連れて突然そう告げました。 離婚でした。 美咲さんは都内のIT企業に勤め、年収は約880万円。収入だけを見れば安定していました。

 

しかし、住宅ローンが残るマンションは売却手続き中。新居を探そうにも家賃は高騰し、子ども2人を抱えて住める物件は簡単には見つかりませんでした。

 

「少しの間だから」

 

内閣府『令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果』によると、ひとり親家庭数141.9万世帯のうち母子世帯数は123.2万世帯であり、全体の86.8%を占めています。昭さんと妻の節子さん(72歳・仮名)は、シングルマザーとなる美咲さんを助けないわけにはいかないと、二つ返事で快諾しました。

 

佐藤さん夫婦の収入は月約25万円の年金のみ。一方で毎月の生活費は約22万円。年金だけでほぼ収支は均衡しています。

 

そのようななか美咲さんは「自分たちの生活費はきちんと出す。それとは別に家にもお金を入れる」と約束しました。「金銭的には生活が少し楽になると思いました」と昭さん。その予想どおり、美咲さんは毎月12万円を生活費として昭さん夫婦に渡すようになり、食費や水道光熱費の増加分を差し引いても家計には以前よりゆとりが生まれました。

 

「正直、お金の心配は減りました。年金暮らしでは、家電が壊れても買い替えをためらっていましたから」

 

節子さんはそう話します。しかし、家計簿には表れない負担が、日に日に重くなっていきました。

 

「保育園のお迎えお願い」

「今日は会議だから夕飯もお願い」

「土曜も出勤になった」

 

最初は週に数回だった頼み事が、いつしか毎日の予定になっていました。 昭さん夫婦の朝は6時半に始まります。孫を起こし、朝食を作り、身支度を手伝う。保育園へ送り、小学生を送り出す。午後は迎えに行き、宿題を見守り、夕食を準備する。風邪を引けば病院へ連れて行き、美咲さんの帰宅が遅い日は入浴まで済ませます。美咲さんの帰宅は夜9時を過ぎる日も珍しくありませんでした。 昭さんが週2回通っていたグラウンドゴルフからは自然と足が遠のきました。節子さんも友人とのランチや体操教室を断ることが増えました。

 

仕事が忙しいのは分かる。でも私たち、もう70代なんです……体力的にきついです」

 

節子さんはそう漏らします。