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セルフ・ネグレクトの要因は「生活の困窮」が1位ではない
浦安市が実施した「セルフ・ネグレクト対策に関する調査分析(令和2年度)」によると、セルフ・ネグレクトが発見された時点での状態として、「生活が困窮しているが、生活保護を申請しない」に該当する割合は低い傾向があります。生活の困窮がセルフ・ネグレクトにつながるケースはありますが、ほかの要因と比べると大きな相関関係は見られませんでした。
そして、昌代さんのように「知人や親族との交流がない」「閉じこもり状態で、外出しない」に該当する割合は、「生活が困窮しているが、生活保護を申請しない」と比べて3倍~5倍以上も高くなっています。昌代さんは家族との交流が全くなかったわけではありませんが、それでも定期的に顔を合わせる機会がなければ見過ごされてしまう可能性があります。
厚生労働省「高齢者虐待の実態把握等のための調査研究事業報告書」によると、令和6年度内における高齢者のセルフ・ネグレクトについて、1,741市町村中、発生件数を「把握している」と答えたのが620件(35.6%)、「ある程度把握しているが件数の算出は難しい」が532件(30.6%)、「把握していない」が589件(33.8%)でした。
昌代さんのように、セルフ・ネグレクトの状態にあることを誰にも気づかれていない人がたくさんいることが見て取れます。
「お金はあるから生活の心配はないだろう」「介護も必要ないし、一人で生活できる状態だから大丈夫」と安心していると、隠れた不調に気づきにくくなってしまいます。
「大丈夫」って言われても、会いに行こう
それから、葉子さんは最低でも月1回は実家に顔を出し、昌代さんの様子を見ることにしました。帰省した日は近所のスーパーで食材や日用品を買い込み、昌代さんのためにおかずの作り置きを用意します。必要な場合は、ごみ捨てや部屋の掃除もしています。昌代さんは「別にいいのに」と言いつつも、どこかうれしそうな表情です。葉子さんの手料理をおかわりすることもあり、顔色もすっかり良くなりました。
「また来月の第三土曜日に来るね」。そう言って、葉子さんは実家をあとにしました。
今回のように、離れて暮らす親が経済的に困っていない場合、「会いに行かなくても大丈夫だろう」と考えてしまいがちです。たとえ生活費が十分にあったとしても、買い物に行く・食事を作る・ご飯を食べるといった日常生活が送れているとはかぎりません。
直接会いに行くことが難しい場合は、ビデオ通話で顔を見て話をするのもよいでしょう。親の顔色や身だしなみ、背景に映る部屋の様子など、ビデオ通話からでも汲み取れる情報はあります。
定期的に会いに行くことが難しい場合は、地方自治体の高齢者見守りサービスを利用するのも有効です。東京都渋谷区では、見守り機能つきのIoT機器を高齢者の自宅に取り付けることで、離れて暮らす家族がスマートフォンで安否を確認できるサービスを提供しています。サービスの対象となるのは、渋谷区内在住で65歳以上の一人暮らしまたは65歳以上のみの世帯の人です。
親は子どもに心配をかけたくなくて、つい「大丈夫」と言ってしまうもの。そのような言葉をうのみにせず、離れて暮らす家族の状況を把握できる仕組みを作ることが大切です。
