人事院『令和8年版公務員白書』には、公務員の人材確保を巡る危機感が色濃く表れています。一般職の国家公務員には最低賃金法は適用されませんが、最低賃金の上昇を受け、一部の若手職員では給与水準が地域別最低賃金相当額を下回るという異常事態も発生しており、国もかつてない「特例措置」への対応を迫られています。現場では何が起きていたのか。若手職員の声から実態を追います。
「友人は時給1,500円なのに…」〈手取り18万円〉24歳・国家公務員の嘆き。最低賃金割れの異常事態に国が下した「前代未聞の決断」 ※写真はイメージです/PIXTA

「最低賃金法の適用外」が想定していなかった時代の変化

こうした現場の声は、一部の職員だけが感じている問題ではありません。

 

人事院『令和8年版公務員白書』では、公務を取り巻く環境について「公務と民間企業等との人材獲得競争は一層激しくなっている」と分析しています。背景には、最低賃金の大幅な引き上げや民間企業の賃上げが続き、若年層を中心に採用競争が厳しさを増している現状があります。

 

一般職の国家公務員には最低賃金法は適用されません。これは、労働基本権が制約される代わりに、人事院勧告を通じて給与水準が決められる制度になっているためです。

 

しかし、人事院『令和8年版公務員白書』では、最低賃金の上昇が続く中、若手職員の月例給与水準が地域別最低賃金に相当する額を下回るケースが生じ得ることを踏まえ、「第二種初任給調整手当」を新設したことを紹介しています。これは、地域別最低賃金に相当する額を下回る場合、その差額を補填する制度です。

 

また、同白書で紹介されている令和7年の給与勧告では、総合職・一般職ともに大卒初任給を12,000円、高卒初任給を12,300円引き上げるなど、若年層を中心とした処遇改善も打ち出されました。

 

かつて、公務員は「安定」と「社会的信用」の象徴でした。一方で現在は、民間企業との人材獲得競争が激化し、給与や待遇も比較対象として厳しく見られる時代です。

 

最低賃金との差額を補う新たな手当が創設されたことは、国家公務員の待遇改善という意味だけではありません。それは、「安定」というブランドだけでは人材を確保できないという現実を、国が制度として認めたことでもあります。

 

若手人材の確保が難しくなれば、行政サービスの維持にも影響が及びます。今回の制度改正は、その危機感の表れといえるでしょう。「公務員なら一生安泰」という従来のイメージだけでは、いまの公務員制度を語れない時代が始まっています。