(※写真はイメージです/PIXTA)
母「迷惑だけはかけたくない」
さらに由美子さんは、押し入れの奥で複数の封筒を見つけます。中には現金が入っていました。5万円、3万円、1万円――少しずつ積み立てたお金です。合計すると100万円近くになっていました。
「これ、何?」
由美子さんが尋ねると、和子さんは困ったように笑います。
「もし私が倒れたら、あんたたちがお金を出すことになるでしょう」
「それだけは嫌なのよ」
由美子さんは胸が締め付けられました。母は浪費していたわけでも、借金があるわけでもありません。むしろ逆でした。将来子どもに迷惑をかけたくない一心で自分の生活を削り、十分な食事さえ我慢していたのです。助けを求めれば娘は支援してくれるはずです。それでも「困っている」と口にした瞬間、親としての立場が崩れてしまう気がしたのでしょう。
「まだ大丈夫」「何とかなる」――。そう言い聞かせながら、毎日の食費を削り続けていたのです。そんな母の思いを知らず、由美子さん、思わず泣けてきたといいます。
帰り際、由美子さんは買い込んだ食材を冷蔵庫へ詰めました。肉や魚、卵や野菜。しかし和子さんは少し困った顔をして「こんなにいらないのに」と、つぶやきました。
「栄養失調で倒れられたほうが面倒なのよ」と、あえて憎まれ口をたたいた由美子さん。親が本当に苦しくても、子どもには見せない、むしろ笑顔で隠してしまう。その現実を知りました。
「だからこそ、先回りして面倒を見てやろうと決めたんです」
そう語る由美子さん。以前より「元気にやってる?」という電話の回数が増えました。そのたびに和子さんも「元気にやってるわよ」と明るい声で返すのが定番だといいます。