老後資金作りの強力な味方として、すっかり定着したiDeCo(個人型確定拠出年金)。「掛け金が全額所得控除になる」という現役時代の高い節税メリットに惹かれ、長年コツコツと積み立てを続けている会社員は少なくありません。しかし、どれほど順調に資産を増やしたとしても、最後の「受け取り方」を一歩間違えると、最後の最後で想定外の重い税負担を強いられることも……。事例とともに、iDeCoの出口戦略の重要性について解説します。
「俺の血と汗が税金でこんなに持っていかれるなんて…」65歳定年夫、退職金2,600万円とiDeCoの〈同時受給〉で課された重税。妻「慰める言葉もありません」 (※写真はイメージです/PIXTA)

息子たちの将来と、妻との老後を守るため

都内の大手機械メーカーに40年間勤め上げ、65歳で無事に定年退職を迎えたハヤシさん(仮名)。現役時代の最終年収は1,300万円に達し、周囲からは順風満帆なエリートサラリーマン人生を送ってきたように見られていました。しかし、その裏には決して平坦ではない道のりがありました。

 

「40歳のとき、職場の福利厚生のセミナーで、2001年にスタートしたばかりだという『確定拠出年金(現iDeCo)』の説明を受けたんです。掛け金がすべて所得控除になり、高い節税メリットがあるという話を聞き、毎月2万円の積み立てを25年間、一度も休まずに続けてきました」

 

ハヤシさんがそこまで頑なに積み立てを守り抜いたのは、家族への強い責任感からでした。仕事が激務を極めて精神的に追い詰められたときも、私立大学に進学した息子の重い教育費の支払いに追われて家計が火の車だったときも、毎月の拠出の手を止めることはありませんでした。時にはプレッシャーから血便が出るほど体調を崩したこともありましたが、家族の未来と自分たちの老後資金のために、ただ歯を食いしばって働き続けてきたと言います。

 

その努力が報われるように、iDeCoの運用成績は良好でした。25年間の元本合計である600万円に対し、65歳時点での評価額は約1,100万円まで膨らんでいました。ハヤシさんは妻と喜び、会社から一括で支払われる退職金2,600万円と同時に、iDeCoの1,100万円についても「一時金」として同じ年に受け取る手続きを進めました。

 

しかし、合計3,700万円という大金が口座に振り込まれるのを前にして、ハヤシさんは税金の落とし穴に気づきます。