高齢単身世帯の増加に伴い、家族がいても実質的には「孤立状態」に置かれる高齢者が増えています。離れて暮らし、長年連絡を取らないまま老後を迎えるケースも珍しくありません。ある日突然、「部屋から異臭がする」という連絡を受けた妹は、長年連絡を絶っていた兄のもとへ向かいます。家族がいるのに誰にも気づかれず孤立していた72歳男性の「リアルな顛末」をみていきます。
「部屋から異臭がする」管理会社からの電話に血の気が引く…10年ぶりに「72歳独身兄」と対面した68歳妹が目撃した「まさかの光景」 (※写真はイメージです/PIXTA)

生活困窮が招いた負のスパイラル

退院後、由紀子さんは兄の部屋を片付けることになりました。そこで見つかったのは、チラシの裏側に書かれた「怖い」の2文字。しかし、兄妹が疎遠になった理由は明確にありましたが、なぜ健一さんはあらゆる人と連絡を絶ってしまったのでしょうか。転機になったのは65歳での退職だったようです。

 

在職中は得意先との付き合いも多く、同僚とよく飲みに行くなど、交流があったそうです。ところが退職後、その関係は急速に途切れます。会社員時代の同僚との付き合いも最初の数年でなくなりました。

 

家計が厳しかったことも、孤立を深めました。たとえば、昔からの付き合いで飲みに行ったとすると、1回5,000円近くかかる。収入が年金だけの健一さんにとって、それはとてつもなく重い負担でした。次第に誘いを断る回数が増えると、今度は声がかからなくなりました。

 

スマートフォンの料金を抑えるため、大手キャリアから格安プランへ変更した際、連絡先の移行もうまくできず、古い知人の電話番号が消えたまま放置していたようです。

 

そして、体調が悪いにもかかわらず「もったいない」と医者にも行かず、食べ物もろくに食べず……とうとう動けなくなってしまったというのが今回の顛末でした。健一さんは「どうしたらいいのか、わからなかった」とポツリ。危険な状態の一歩手前でした。しかし、緊急連絡先として由紀子さんの家の番号を知らせていたことで、兄妹はまさかの再会を果たすことになったのです。

 

健一さんの部屋に残されていた「怖い」の2文字。それは死への恐怖、誰にも知られず消えていくことへの恐怖だったのかもしれません。発見があと数日遅れていたら、由紀子さんが兄と再会することはなかったでしょう。

 

10年以上会わなかった兄妹は、再び連絡を取るようになりました。