(※写真はイメージです/PIXTA)
自宅売却という決断
「まさか家を売ったことを後悔する日が来るとは思いませんでした」
東京都郊外で暮らす佐藤和夫さん(74歳・仮名)。妻の美代子さん(72歳・仮名)とともに、30年以上住み続けた戸建て住宅を手放したのは4年前のことです。和夫さんは中小企業の営業職として働き、65歳で退職。夫婦の年金収入は月額約24万円です。一方で、自宅は築35年を超え、外壁や屋根の修繕、水回りの更新などが必要な状態でした。
当時の貯蓄は約700万円。
「このままだと老後資金が持たない」
そう考えた夫婦は、自宅を売却することを決めます。売却価格は2,450万円。手元資金が一気に増えたことで、夫婦は安堵しました。
「これで老後はなんとかなると思ったんです」
売却後、駅から徒歩圏内の賃貸マンションへ転居しました。家賃は月10万円。築年数は古いものの、管理状態は良好でした。当時は大きな問題を感じていませんでした。売却資金がある以上、家賃を払うことに不安はなかったからです。しかし、その計算は数年後に狂い始めます。
年金を圧迫する家賃
引っ越しから3年が経過した頃でした。電気代やガス代、食料品価格の上昇が家計を直撃します。
総務省の家計調査でも、高齢夫婦無職世帯は毎月の収支が赤字となる傾向が続いています。年金収入だけで生活費を賄うことは容易ではありません。佐藤さん夫婦も例外ではありません。
月24万円、手取りにすると月20万円の年金収入に対し、家賃が10万円。管理費を含めると10万8,000円です。残り約9万円で、食費、光熱費、通信費、医療費、保険料を支払います。
和夫さんは高血圧と糖尿病を抱えています。美代子さんも膝の治療で定期的に通院していました。医療費だけで月2万5,000円前後。食費は月3万円近くになります。気が付けば、毎月3万円から4万円の赤字。不足分は自宅売却で得た資金から補填していました。
「通帳を見るたびに残高が減っていく。持ち家のときには味わったことのない感覚で、不安が大きくなりました」
当初2,000万円以上あった資金は、生活費や医療費、引っ越し費用などで徐々に減少していきます。そして夫婦をさらに追い詰める出来事が起きました。契約更新を数ヶ月後に控えたある日、不動産管理会社から連絡が入ったのです。
「次回更新についてご相談があります」
その言葉に嫌な予感がしたといいます。