「老後は子どもが支えてくれる」という前提で人生設計を立てる親世代と、「自分たちの家庭は自分たちで築く」と考える子世代。その意識のずれは、退職後の家計や住まいに大きな影響を及ぼすことがあります。息子夫婦との同居を見込んで二世帯住宅を建てたものの、その計画が実現しなかった夫婦の事例を通して、親の老後設計に潜むリスクをみていきます。
「同居の意思はありません」4,000万円かけて二世帯住宅に建て替えた65歳夫婦の誤算。〈年金月27万円〉で払い続ける住宅ローンと、一度も使われない「2階のシステムキッチン」 (※写真はイメージです/PIXTA)

三世代同居はわずか8.8%、激変する高齢者の世帯構造

内閣府の「令和8年版高齢社会白書」によると、令和6年現在、65歳以上の人がいる世帯は全世帯の50.3%と半数を超えました。しかし、その世帯構造は昔と大きく異なります。親・子・孫が同居する「三世代世帯」は、昭和55年(1980年)には約半数を占めていましたが、令和6年にはわずか8.8%へと激減。代わって増加しているのが「単独世帯(一人暮らし)」で31.8%、「夫婦のみの世帯」で32.7%となっています。

 

もっとも、正夫さんは住宅を建てた当時、そうした変化を意識していませんでした。

 

「自分たちの親世代は当たり前のように同居していましたから。息子もそうだと思っていました」

 

現在も住宅ローンの返済は続いています。毎月の返済額は約6万5,000円。退職前は大きな負担ではありませんでした。しかし年金生活になると状況は変わります。固定資産税や修繕費も必要です。

 

「夫婦二人には広すぎる家なんです。でも維持費はそれ以上」

 

最近では、使わない部屋の掃除さえ負担になってきたといいます。洋子さんもこう語ります。

 

「息子が悪いとは思いません。自分たちの人生がありますから。ただ、私たちが勝手に期待していただけなんですよね」

 

正夫さんも同意します。

 

「いま振り返ると、家を建てる前に一度きちんと聞くべきでした。『将来どうしたいのか』を」


親にとって自然な将来像でも、子どもにとっては共有されていないことがあります。正夫さん夫妻の二世帯住宅は、その認識の差を形として残したままです。

 

「年寄りになっても、息子を当てにするつもりはなかったんです。でも無意識に当てにしていたんでしょうね」