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親子の「思い込み」が生んだ二世帯住宅の誤算
「老後は子どもが面倒を見てくれる」。そうした前提で住宅や資産の計画を立てる人は少なくありません。しかし、その期待が子どもと共有されているとは限りません。埼玉県在住の佐々木正夫さん(69歳・仮名)は、そのことを退職後に痛感した一人です。
「いま考えれば、息子にちゃんと確認したことはありませんでした。結婚したら戻ってきて、一緒に住むものだと思い込んでいたんです」
正夫さんは妻の洋子さん(67歳・仮名)と二人暮らし。長年勤めたメーカーを65歳で退職し、現在は夫婦合わせて月27万円ほどの年金を受給しています。そんな正夫さん夫妻が頭を抱えているのは、約10年前に建てた二世帯住宅です。当時、長男の健太さんは29歳で、都内の企業に勤めていました。
「息子は一人っ子でしたし、いずれ結婚したら帰ってくると思っていました。周囲にもそういう家庭はありましたから」
築35年だった実家は老朽化が進んでいました。そこで正夫さんは建て替えを決断します。総工費は約4,000万円で、2,000万円の住宅ローンを組みました。1階を夫婦の生活空間、2階を将来の息子夫婦世帯として設計。玄関は共有ですが、浴室やキッチンは別々です。
「息子夫婦にも気兼ねなく暮らしてほしいと思ったんです」
2階には約150万円をかけたシステムキッチンも設置しました。結婚間近と考えていたことと、健太さんの恋人が料理好きだと耳にしたからです。しかし建て替えから3年後、状況は大きく変わります。健太さんが結婚を報告した際のことです。
「結婚したら戻ってくるんだろ?」
そう尋ねた正夫さんに対し、健太さんは少し驚いたような表情を見せたといいます。
「いや、考えてない」
その一言で、正夫さんの想定は崩れ去りました。
「最初は冗談かと思いました。だって二世帯住宅を建てたことも知っていましたから」
しかし、健太さんの考えは変わりませんでした。勤務先への通勤や妻の仕事を考えると、実家へ移る選択肢はなかったといいます。
「親父たちのことは心配してる。でも同居は別の話だから」
その後も話し合いは続きましたが、結論は変わりませんでした。結婚から5年が経った現在も、息子夫婦は都内のマンションで暮らしています。一方、実家の2階はほぼ使われていません。システムキッチンも新品同然の状態です。
「いつ同居することになってもいいように。せめてキレイにしておこうと思って……」