高度経済成長期からバブル期にかけて人気を集めたニュータウン団地で、いま一斉高齢化による「オールドタウン化」が進んでいます。住民の高齢化、空き家の増加、商業機能の衰退が重なり、老後の暮らしを脅かすケースも少なくありません。かつて“夢の街”だった団地で暮らす80歳女性の現実を通して、見えにくい老後リスクを見ていきます。
「もう、誰もいない…」かつて抽選倍率の高かった「憧れの団地」の今。〈年金月14万円〉80歳母が怯える「孤独死7万人時代」の恐怖 (※写真はイメージです/PIXTA)

住み続けるのは怖い、でも動けない現実

真由美さんは東京で夫と二人暮らし。大学生の子どもは一人暮らしを始め、約1,200万円残っている住宅ローンの返済に加えて、仕送りも重くのしかかります。和子さんのことが心配であるものの、頻繁に通うことは難しい現実があります。

 

「こっちに来ない?」と提案したこともあります。しかし和子さんは首を振ったといいます。「ここで生きてきたから、今さら東京なんて……」と。

 

帰省最終日の朝。真由美さんは掲示板の前で立ち止まりました。空き住戸の案内が何枚も貼られていました。かつてなら考えられなかった光景です。部屋へ戻ると、和子さんが洗濯物を畳んでいました。

 

「最近ね、救急車の音がすると気になるの」

 

誰かが運ばれたのではないか。そんなことばかり考えるといいます。そして小さな声で続けました。

 

「みんな同じ年齢だからね。少しずつ人がいなくなって、きっと誰もいなくなるのよ」

 

かつて誰もが憧れたニュータウン。再生に成功し、新しい世代を迎え入れている地域もあります。一方で、高齢化による“過疎化”が問題視されている地域も多くあります。

 

和子さんの暮らす街では、高齢化のスピードが変化を上回っていました。建て替えの話も出ているようですが、まだまだ先の話のよう。このまま高齢の母を一人住まわせておくのは、あまりにリスクが高すぎました。

 

「どうやって母を説得して、住み替えさせるか……帰りのバスの中でそんなことだけを考えていました」

 

今のところ、妙案はないといいます。