高齢の親が一人暮らしを続けるなか、「まだ大丈夫だろう」という家族の思い込みが深刻な事態を招くケースが増えています。介護保険サービスを利用していても、家族が離れて暮らしている場合、異変の兆候を見逃してしまうことは珍しくありません。85歳の父から突然届いたSOSをきっかけに、仕事を続けながら親の介護に向き合う独身息子が直面した現実をみていきます。
「助けて…」〈年金月16万円・貯金980万円〉85歳父の掠れた声。独身息子が実家で目撃した「衝撃的な惨状」と老親一人暮らしの限界

独身息子の絶望

半年後。正夫さんの状態はさらに悪化しました。認知機能の低下も疑われるようになります。

 

同じ話を何度も繰り返す。

薬の管理ができない。

深夜に近所を歩き回る。

 

そんな問題が相次ぎました。老人ホームへの入所の話も出ました。特別養護老人ホーム(特養)への入所は原則要介護3以上ですが、認知症による徘徊や暴言などで常時見守りが必要な場合などは「特例入所」が認められる場合も。また特養であれば、年金月16万円でも、十分に入所が叶います。

 

「ずっと家にいたい」と激しく抵抗することもある正夫さん。いよいよ潮時かもしれません。そう感じるとともに、こみ上げてくるのは正夫さんへの怒りです。

 

「もっと早く言えよ」

「なんで助けを求めなかったんだ」

 

帰りの新幹線で何度も思いました。同時に罪悪感も押し寄せます。

 

「なぜ、気づけなかったのか」

 

厚生労働省『人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査』によると、病気で治る見込みがない場合に最期を迎えたい場所として、43.8%が「自宅」を選択し最多となっています。また、自宅を選んだ理由としては「住み慣れた場所で最期を迎えたいから」(68.9%)や「最期まで自分らしく好きなように過ごしたいから」(61.5%)が多くを占めています。正夫さんのように、限界を迎えてもなお、住み慣れた我が家に留まりたいと願う高齢者は決して珍しくないのです。