熟年離婚や定年退職をきっかけに、それまで当たり前だった生活が一変する人が少なくありません。経済的には問題がなくても、孤独や無気力によって生活が急速に崩れていくケースもあります。60歳で1人暮らしとなった男性の実家が、わずか4ヵ月でゴミ屋敷へと変貌した事例から、老後の見えにくいリスクについてみていきます。
嘘だろ…32歳長男、玄関を開けて絶句。60歳父が1人で暮らす実家が〈たった4ヵ月〉でゴミ屋敷になった真相 (※写真はイメージです/PIXTA)

久々の帰省で見た光景

「嘘だろ……」

 

玄関のドアを開けた瞬間、田中翔太さん(32歳・仮名)は言葉を失いました。

 

鼻をつく生ゴミの臭い。

廊下に積み上がったコンビニ袋。

脱ぎ捨てられた衣類。

空になったペットボトル。

 

築38年の実家は、わずか4ヵ月前まで普通の家だったはずでした。父の田中義雄さん(60歳・仮名)が1人暮らしを始めたのは前年秋のことです。長年連れ添った妻との熟年離婚。その直後に定年退職を迎えました。

 

離婚の原因はよくわかりません。子どもの目からは、円満夫婦にみえました。でもそうではなかったようです。きちんと理由を聞いたことはありません。本人たちしかわからないことがあるのだろうと、あえて聞いていなかったのです。

 

また翔太さんは県外で暮らしており、仕事も忙しかったため、頻繁には帰省できません。離婚したことも、すべて事後報告として電話で聞いただけでした。

 

母の出ていった家で、父が1人暮らしなどできるのだろうか……そんな不安もゼロではありませんでした。

 

「父は昔から真面目な人でした。毎朝決まった時間に起きて、家の掃除もきちんとする。不安に思うところもあったけれど、大丈夫だろうと思っていたのですが……まさかゴミ屋敷になるなんて想像もしませんでした」

 

居間へ進むと、ソファには洗濯物が山積みになっていました。

 

床には弁当の容器。テレビはつけっぱなしです。しかし父の姿はありません。寝室をのぞくと、義雄さんは昼過ぎにもかかわらず布団に横になっていました。

 

「何してるの?」

 

そう声をかけても、反応は鈍かったといいます。

 

「別に」

 

短く返しただけでした。