(※写真はイメージです/PIXTA)
明らかになった使途に仰天
その後、美香さんは父親の部屋から大量の封筒を発見します。差出人は複数の業者でした。
健康食品、サプリメント、磁気ネックレス、高額寝具、通信販売の商品案内――中には数十万円単位の領収書もありました。
さらに調べると、正夫さんは電話勧誘や訪問販売を通じて、数年間にわたり次々と商品を購入していたことがわかります。
「今だけ特別価格です」
「健康寿命を延ばせます」
「息子さんや娘さんには頼れませんよ」
そんな言葉を信じて契約を重ねていたのです。日々の生活費に加え、通販だけで年間300万円を超える支出の年もありました。
年金収入が年間84万円程度であることを考えれば、その赤字分はすべて、預金を切り崩して補うしかなかったのです。それなのに、本人に悪意はなく、さらに詐欺被害だという自覚すら持っていませんでした。
「体にいいと思った」
「将来困らないように買った」
そう繰り返すばかりでした。高齢者の消費者被害は国民生活センターにも多数寄せられていますが、問題をさらに複雑にするのが認知機能の低下です。本人が納得して購入したと主張する場合、家族が介入しようとしても容易ではありません。まして預金を現金化してしまえば、通帳の履歴以外に資金の流れを追う手段は限られます。
「手元に現金があったばかりに……」
日本銀行「資金循環統計」では、2025年末の家計金融資産2,351兆円のうち、現金・預金は約1,140兆円(48.5%)を占めます。現金志向の強さがうかがえる一方、家族にも把握されないタンス預金は、認知機能の低下や相続時に思わぬトラブルを招く要因にもなっています。
介護施設への入居を検討すると、月額利用料は15万〜20万円程度。入居一時金が必要な施設もあります。残された預金だけでは、将来の選択肢は大きく狭まります。
このまま父親を一人暮らしさせるわけにはいかない――そう思いつつ、答えは出ていません。