会社員のなかには、「自分1人の力を試したい」と、独立・起業を志す人も少なくないでしょう。しかし、そこには現役時代には見えなかった公的年金の落とし穴が潜んでいます。突然の不幸によって、信じていた老後設計が根底から覆されたある女性の事例をみていきましょう。
「遺族年金なんて、当てにするんじゃなかった…」突然死した67歳夫が隠していた秘密に、62歳妻「後悔しかありません」と語る残酷理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

突然の別れと突きつけられた預金残高

佐藤美智子(62歳・仮名)が、夫の佐藤博(当時67歳・仮名)を突然失いました。

 

ある日、博さんは自宅のリビングで夕食を終えた直後、胸を押さえて倒れ、救急搬送されたものの急性心筋梗塞でそのまま帰らぬ人となりました。持病もなく、前日まで元気に働いていた夫の突然の死に、美智子さんは深い悲しみに暮れる暇さえありませんでした。

 

葬儀を終え、今後の生活費を確認するために博さんの遺品を整理し始めた美智子さんは、書斎の引き出しから出てきた複数の銀行口座の通帳を見て、我が目を疑いました。記載されていた預金残高をすべて合わせても、わずか103万円しか残されていませんでした。

 

「主人は40代前半で大手電機メーカーを辞め、独立しました。その後は『これからは個人のスキルを活かす時代だ』といって、経営コンサルタントをしていました。毎月、生活費として25万円をきっちり手渡してくれていたので、まさか貯金がこれだけしかないとは夢にも思いませんでした」

 

美智子さんはパート収入が月6万円ほどありますが、住まいの都内分譲マンション(築30年)は、ローン完済済み。何不自由ない暮らしを送っていると考えていました。

 

しかし、博さんのパソコンやスマホの履歴、およびデスクの奥から見つかった書類から、信じがたい現実が次々と浮き彫りになっていきました。博さんは独立後、最初の数年こそ大手時代のコネクションで相応の収入を得ていたものの、ここ10年ほどは顧客を次々と失い、実際の月収は10万円以下に激減していました。

 

それにもかかわらず、元大手企業社員としてのプライドからか、美智子さんに本当の困窮を打ち明けることができませんでした。

 

博さんはネット銀行からの小口融資や、スマートフォンのアプリ決済を利用したキャッシング、さらには複数のクレジットカードのリボ払いを繰り返し、美智子さんに渡す「見せかけの生活費」を捻出していたのです。デスクの奥には、総額350万円にのぼる消費者金融からの督促状が隠されていました。

 

美智子さんは相続放棄も頭をよぎったといいます。しかし、夫名義の財産には都内の分譲マンションも含まれており、相続放棄をすれば借金だけでなく自宅を含む遺産も受け取れなくなります。住み慣れた自宅を手放す可能性があることから、借金額だけを見て直ちに相続放棄を決断できる状況ではありませんでした。