親世帯との近居や交流において、家族間のプライバシー境界線が曖昧になり、良かれと思った行動がかえって深刻な家族間の亀裂を生むケースもあるようです。ある女性のケースから、現代の家族における適切な距離感の保ち方をみていきます。
「お義母さん、ここ私たちの家なんですけど」合鍵を渡した32歳妻の悲劇。週5で冷蔵庫をチェックする68歳義母の過干渉 (※写真はイメージです/PIXTA)

善意から始まった「合鍵」の受け渡し

都内のIT企業にフルタイムで働く高橋美咲さん(32歳・仮名)は、ここ半年の間、夜間に十分な睡眠をとることができない状態にあるそうです。その要因は、夫である大樹さん(34歳・仮名)との間に生じた関係の冷え込みと、その引き金となった大樹さんの母親・高橋智子さん(68歳・仮名)による日常的な振る舞いにありました。

 

「家に帰るのが苦痛でした。自分のプライベートがすべて監視されているようで、心が休まりません」

 

二人は3年前に結婚し、2年前、大樹さんの実家から徒歩10分ほどの場所に分譲マンションを購入しました。生活のバランスが崩れ始めたのは、新居への入居から数ヵ月後のことです。当時、仕事の繁忙期に追われていた美咲さんに対し、大樹さんが「万が一の緊急事態に備えて、実家の母に合鍵を一枚預けておかないか」と持ちかけました。美咲さんも急な体調不良や災害時などの対応を想定し、良かれと思ってこれを受け入れたといいます。

週5日の無断立ち入りと「冷蔵庫チェック」の日常

鍵を渡したことを契機に、智子さんの立ち入りは美咲さんの想定を超えてエスカレートしていきました。当初は「共働きで忙しい二人のために」という善意に基づくおかずの差し入れでしたが、事態は次第に変質しました。智子さんは夫婦が不在の時間を見計らって事前の連絡なしに室内へ立ち入るようになり、その頻度は週に5日に及ぶようになりました。

 

なかでも美咲さんを驚愕させたのが、智子さんによる冷蔵庫の確認行為でした。義母は留守中に冷蔵庫を開け、中の食材や常備菜を精査していたそうです。

 

「食材の消費期限を一つひとつ調べられ、期限が迫っているものには付箋で『早く使い切るように』と書き置きがされました。さらに、市販の惣菜が見つかると、後日『手作りの食事を用意しなさい』と直接苦言を呈されることもありました」

 

智子さんによる介入は冷蔵庫だけに留まらず、洗濯物の畳み方やリビングの埃など、家事の至る所にチェックの目が及び、その都度メモや口頭での指導が繰り返されました。不在時に生活空間を細部まで観察されている事実は、美咲さんにとって強いストレスになりました。