(※写真はイメージです/PIXTA)
13.4%…外に出る機会が極端に少ない中高年
陽介さんは同居開始から1年が経ったころ、職場の人間関係と過重労働から体調を崩し、退職を余儀なくされていました。しかし、両親に無職になったと言い出すことができなかったと話します。
ある意味、実家に自室がある環境を利用し、「リモートワークで在宅勤務を続けている」という状況を1年間、演じてきたわけです。
内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)』によると、40〜69歳で外出頻度が極めて低い、あるいは趣味やコンビニ等の用事以外は家にいる状態の人は13.4%にのぼります。
さらに「普段は家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する」は6.8%、「普段は家にいるが、近所のコンビニなどには出かける」は5.8%です。また「家から出ない」は0.6%、「自室からほとんど出ない」は0.2%でした。
また、その状態になった最大のきっかけは「退職したこと(37.3%)」であり、「病気(17.3%)」も上位に挙がります。その背景には、「上司や同僚との関係悪化」や「能力を超える仕事量」、「ハラスメント」といった仕事・職場の問題が多く潜んでいます。
陽介さんが両親に事実を隠していたように、中高年の当事者は周囲に助けを求めにくい傾向があります。誰にも相談したくない理由として、約3割の人が「自分ひとりで解決するべき(特に男性は36.3%)」と考えており、問題を抱え込む実態が浮き彫りになっています。
月19万円の年金と3,800万円の資産を蝕む「引きこもり予備軍」
陽介さんは退職してからの1年間も、毎月一定の生活費を家に入れていました。しかし、それは本人の貯金を取り崩していただけであり、その貯金も完全に底を突いていました。
現在、陽介さんの国民年金や保険料、携帯電話の通信費、日々の食費は、すべて健一さんの資産から拠出されています。しかし、月19万円の年金収入では、大人3人の生活費を賄うことは難しく、毎月約10万円程度を貯蓄から取り崩して対応しています。
事実が発覚して以降、角部屋の空気は一変しました。
健一さんが「これからの生活をどうするんだ。いつまでも面倒は見切れない」と声を荒らげると、陽介さんは「うそをつきたくてついたわけじゃない。これ以上追い詰めないでくれ」と自室にカギをつけてしまったのだとか。
厚生労働省『ひきこもり地域支援センター運営事業』の資料では、家族が本人の「働いているふり」を責め立てることは、本人の孤立感を深め、長期化を招くリスクがあると警鐘を鳴らしています。しかし、自身の老後資金が減少していく健一さんにとって、冷静でいることは容易ではありません。
親が65歳、子が42歳。一見、リモートワークという現代的なライフスタイルに見えた山田家の日常は、一歩間違えれば家庭崩壊へとつながる「8050問題」の予備軍でした。