40年間家族のために働き続け、退職金と貯蓄で3,000万円はあるはずだと確信していた64歳の男性。しかし、定年を機に妻から手渡された通帳の残高は、予想もしていなかった金額でした。ある男性の事例から、老後を見据えた家族との関係について考えます。
「俺が稼いだ金を何に使っているんだ!」〈年金月18万円〉〈老後資金3,000万円〉を想定していた64歳男性、思わず二度見した「貯金通帳の中身」。63歳妻の涙の告白に絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の義母と50代の働かない義弟への仕送り

「義父は10年ほど前に他界し、義実家には義母のほか働いていない義弟がいました」

 

高齢の義母の年金は、基礎年金だけ。それで大人2人が暮らしていくことはできず、毎月仕送りをしていたそうです。月10万円、1年で120万円、10年で……。さらに実家のリフォーム代などの大きな出費も、すべて出していたといいます。小林さんが貯まっていると信じていた老後資金の大部分は、義実家を維持するために消費されていたのです。

 

厚生労働省『2022(令和4)年 国民生活基礎調査』によると、子から親へ定期的に仕送りをしている世帯は全体の1.9%ほどと少数派。また親へ仕送りをしている世帯における、1カ月あたりの仕送り平均額は5.6万円ほど。月10万円以上の仕送りをしている世帯は18.8%にも上ります。

 

また生活保護受給世帯の45%が65歳以上のみで構成される高齢者世帯(2026年2月時点)。高齢者世帯は全国で1,700万世帯といわれているので、実にその5%が生活保護を受けています。

 

年金への依存率が高く、困窮しやすい高齢者世帯ですが、さらに近年は中高年の子どもの未就労が重なり、親の年金だけでなく、別の世帯である子世代が仕送りで補填するケースも少なくありません。

 

「親や兄弟を助けたい気持ちは分かります。しかし私の知らないところで、大金が消えていたなんて、ショックでした」

 

小林さんは、「俺が稼いだ金だぞ!」「何に使っているんだよ!」「俺の40年を返してくれ!」と当時を振り返り、声を荒げてしまったと言います。

 

とはいえ、由美子さんの実家の生活は小林家からの仕送りなしには成り立っておらず、支援を完全に打ち切れば、高齢の義母と働かない義弟の生活は即座に破綻してしまいます。

 

解決策としては、これ以上の個人による私的援助を縮小し、公的扶助や社会保障制度、就労支援へ移行させることが挙げられます。高齢者の困窮に対しては高額療養費制度や介護保険の減免制度、さらには要件を満たせば生活保護の申請などがあるほか、働けない親族に対しては中高年向けの就労支援窓口や、ひきこもり地域支援センターなどへの相談が必要です。

 

「家計をすべて妻に任せっきりにしていた、責任を押し付けていた、そのことも要因のひとつ。妻だけを責めることはできません。これから、向こうの行政に相談するつもりです」