70歳まで現役で働き、年金を増やして優雅な老後を送るはずだった。しかし、満を持して訪れた年金事務所で、増額されるはずの年金が、すべて水の泡に――。ある男性を絶望のどん底に突き落とした、年金制度の落とし穴とは?
早く年金をもらっていれば、こんな悔しい思いはしなかった…〈年金403万円〉をもらい損ねたと絶望する70歳男性、「取り返しのつかない過ち」 (※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の選択を阻む「制度の複雑化」という壁

日本の公的年金制度は、度重なる改正によって複雑化しており、受給者がその全容を正確に把握することは容易ではありません。

 

厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、老齢厚生年金の受給権者数のうち、繰下げ受給を選択している人の割合は、全体の中で数%程度に留まっています。昨今、繰下げ受給のメリットを目にするようになりましたが、制度の例外規定や制限については、必ずしも十分に周知されているとはいえません。

 

「この際だから、ちゃんと勉強しておこうと思ったんだけど……資料をみても素人にはよくわからないよ」

 

野村さんは、本来65歳から70歳までの間に受け取るはずだった通常の年金を、遡って一括で請求する手続きを行いました。まとまった現金は手に入ったものの、当初計画していた「増額された年金による老後」という設計は崩れる結果となりました。

 

公的年金は、老後の経済基盤を支える柱です。だからこそ、理解不足によって予期せぬ不利益が発生するリスクをつねに孕んでいます。特に、過去に家族の逝去に伴う給付(遺族年金や障害年金など)を受けた経験がある場合は、自身の老齢年金の受け取り方に制限がかかる可能性が高くなります。

 

年金に関するまさかの事態を防ぐために、65歳を迎える前の段階で、年金事務所に相談するのも確実な一手。老後のベースとなる年金の仕組みを正しく見極める慎重な姿勢が、これから高齢期を生きる人たちには求められています。