単身世帯の金融資産保有額の中央値が130万円にとどまる現代。「40代でのFIRE」を目指し、実家暮らしで節約と投資を続けるユウタさん(仮名・36歳)は、資産2,500万円を突破しました。家庭を持つ同世代に「勝ち組は俺だ」と強がるものの、本音は違いました。投資を最優先にして「今」を犠牲にした結果、ふと気づいた「お金以外何もない…」という悲しい現実に直面しています。
「勝ち組は俺」と強がるも…実家暮らしで〈資産2,500万円〉を築き、FIREを目指す36歳男性。ふと気づいた「お金以外何もない…」の悲しい現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

「俺のほうが人生の勝ち組だ」強がりの裏に隠れた〈悲しい本音〉

SNSを開けば、かつての友人たちが結婚式を挙げ、子どもを授かり、マイホームを建てていく姿が次々と目に入ってきます。休日に家族で出かけたり、子どもの成長を喜んだりする彼らの投稿は、どれも心から幸せそうでした。

 

「周りは家族だマイホームだとお金を使い込んで、老後の貯金なんてほとんどないはず。それに比べて俺は2,500万円もある。最終的な人生の勝ち組は俺のほうだ」と自分にいい聞かせますが、本音は違いました。

 

仮にこのままの生活を続け、40代で念願のFIREを達成し、自由な時間とお金を手に入れたとします。しかし、そのとき一緒に喜んでくれる家族も、遊んでくれる友人もいなかったら、一体何をして過ごせばいいのでしょうか。いずれ両親もいなくなれば、本当に孤独な人生を送ることになるのではないかという恐怖。

 

「たしかに自分の資産形成は順調です。でも、周りは結婚や子どもで幸せそうに笑っている。それに比べて、自分はお金以外何も持っていないんじゃないかって……」

 

早期リタイアという「未来」を優先するあまり、かけがえのない「今」を犠牲にしているユウタさん。資産グラフは右肩上がりですが、「本当にこれでいいのか」と、自分の生き方への迷いは深まるばかりです。

「家計と資産」が人生の充実感にもたらす影響度

金融庁の調査によれば、NISA口座数は約2,825万口座にのぼり、非課税制度を活用した資産形成は若年層にも定着しました。しかし近年、ユウタさんのように投資資金を捻出するために現在の生活を切り詰め、結果として人間関係や経験の機会を失ってしまう「NISA貧乏」が問題視されています。

 

また、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、単身世帯の金融資産保有額の中央値は「130万円」にとどまっています。ユウタさんが築いた2,500万円という資産は、一般的な水準の約19倍にも上る突出した額であり、いかに「現在」を切り詰めているかが数字からも推測できます。

 

そして、内閣府の「満足度・生活の質に関する調査報告書(令和7年)」において、「充実した人生を送れているか」に影響する要素を分析したデータを見ると、「家計と資産(回帰係数0.167)」が人生の充実感にもたらす影響度に対し、「日々の生活の楽しさ・面白さ(同0.424)」が大きな影響を与えており、「交友関係やコミュニティなど社会とのつながり(同0.136)」といった目に見えない要素も家計に匹敵するほど重要であることが、具体的な数値として示されているのです。

 

未来のための資産形成は生きていくうえで欠かせませんが、極端な節約によって今しか築けない人間関係や自己投資の機会を絶ってしまうと、結果的に人生の満足度を下げ、あとになって後悔を生む恐れがあります。将来への備えと現在の充実感、どちらか一方に偏るのではなく、自分の生活が苦しくならない範囲で長く投資と付き合っていく視点が、今の現役世代には求められるでしょう。

 

[参考資料]

金融庁「NISA口座の利用状況調査(令和7年12月末時点(速報値))」

金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」

内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書(令和7年)」