近年、定年退職後の生活資金を補うため、現役時代に培った資産の運用を検討する高齢者が増えています。しかし、十分な知識がないまま焦って投資を始めた結果、老後資金を大きく減らしてしまうケースは後を絶ちません。周囲の言葉に背中を押されて投資に参入し、思わぬ窮地に立たされたある元教師の事例を通して、シニア層における資産運用のリスクと現実をみていきます。
妻「だから、やめたらと言ったのに…」〈退職金2,200万円〉62歳元教師、友人「資産運用してないの?」に焦って投資に手を出した末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

止まらない損失…「わずか1年」で元金は半減へ

「ここで売ったら損が確定する。いずれ戻るはずだ」

 

そう自分に言い聞かせながら、坂本さんは損失を取り戻そうとして、さらに残りの退職金から買い増しを続けました。しかし、市場の下降トレンドは止まりませんでした。

 

結果として、1,000万円あった投資資金は、わずか1年足らずで約500万円にまで目減りしてしまったのです。

 

金融庁が2024年に公表した資料や、国民生活センターの相談事例を見ても、シニア層による金融商品の理解不足に伴うトラブルや損失相談は高水準で推移しています。特に、定年退職直後のまとまった資金を狙った高リスク商品の勧誘や、自己判断による過度なリスクテイクが問題視されています。

 

大幅な含み損を抱えた口座画面を見つめていた坂本さんに、背後から恵子さんが静かに声をかけました。

 

「だから、やめたらと言ったのに……。これからどうするの」

 

その言葉に、坂本さんは返す言葉がありませんでした。

 

結局、精神的に耐えきれなくなった坂本さんは、投資口座に残っていた資金をすべて解約し、損失を確定させました。手元に残った退職金は、当初の半分ほどです。

 

「失ったお金は二度と戻りません。これからは再雇用やパートの仕事を増やして、生活を切り詰めていくしかありません」

 

退職金というまとまった資金を手にしたときこそ、周囲の情報や一時的なブームに流されず、自身のライフプランに合った堅実な資産管理を行うことが求められます。