かつては「夫が稼ぎ、妻が家を守る」という家庭像が一般的で、夫が給与を妻に渡し、妻が家計を管理する“お小遣い制”を採用する家庭も多くありました。現在は共働き世帯が増えていますが、さまざまな事情からお小遣い制を続けている家庭も少なくありません。しかし、このお小遣い制には「家計の不透明さ」という問題が潜んでいます。収支が見えにくいまま運用されると、夫婦のどちらかに不満が蓄積し、最悪の場合、関係悪化につながる可能性もあります。今回は、実際の事例をとおして、お小遣い制に潜むリスクとその背景をみていきましょう。
「いまさら一人で、どうやって生きていけと?」月収90万円・小遣い4.5万円の58歳会社員夫が差し出した離婚届。取り乱す56歳妻に告げられた“夫の言い分” (※写真はイメージです/PIXTA)

我慢が限界に…テーブルに置いた「離婚届」

子育てが終わっていないこともあり、「離婚は定年まで我慢だ」と1年耐えたマサヒロさんでしたが、妻がまだその男性と連絡を取っていることがわかり、堪忍袋の緒が切れました。

 

マサヒロさんは用意しておいた1枚の紙をテーブルに置き、妻に声をかけます。

 

「もう無理だ。離婚しよう。子どもたちのことは俺がなんとかする」

 

カヨさんは一瞬驚いたあと、「急になにいってるの?」と取り合わない様子でしたが、マサヒロさんの本気具合を感じ取ると、とたんに慌てだしました。

 

「いまさら一人で、どうやって生きていけっていうのよ」

 

泣きじゃくる妻に、マサヒロさんは同情のまなざしを向けることなく、カバンから一冊のファイルを取り出しました。

 

「これを見てくれ」

 

それは、マサヒロさんが開示させていた、カヨさん名義の通帳のコピーとクレジットカードの利用明細の束でした。

 

月収90万円、年収にして1,200万円を超える生活を何年も続けてきたはずなのに、家計の貯蓄はほとんど残っていません。そればかりか、マサヒロさんのお小遣いを厳しく制限してガソリン代まで自己負担させていた一方で、カヨさんは特定の男性への度重なる贈り物や、自身の贅沢品のために、年間数百万円規模の「使途不明金」を費やしていました。

 

「夫に必要な生活費すら渡さず困窮させる経済的虐待」と「共同財産の勝手な浪費」。婚姻関係を破綻させた明確な責任が妻側にあることを示す客観的な証拠の前に、カヨさんはそれ以上言葉を失ってしまいました。マサヒロさんは泣き崩れる妻に背を向け、静かに部屋をあとにしたのです。

「お小遣い制」は時代遅れ?現代特有の問題とは

総務省の「家計調査報告(2025年平均)」によると、二人以上の世帯のうち勤労者世帯の1ヵ月当たりの実収入は65万3,901円、税金や社会保険料などを差し引いた可処分所得は平均53万2,408円です。一方で、日々の生活にかかる消費支出は34万6,297円となっており、手元に残るお金から住宅ローンの返済や子どもの教育資金、将来のための貯蓄などを差し引くと、可処分所得の多くが消えてしまいます。

 

そのため、残った金額のなかから夫婦それぞれの自由に使えるお金を割り振ると、月3万~4万円程度が一般的な家計から「現実的に捻出できる金額」に落ち着きやすいという背景があります。

 

とはいえ、物価高が続くなか、月3万~4万円程度の金額から昼食代やガソリン代まで捻出するのは現実的ではないと思う人も多いでしょう。事実、同調査では、物価変動の影響を除いた勤労者世帯の「実収入」は、実質で前年比0.9%減少しています。給与の額面が増えていても実際の家計のゆとりは目減りしており、多くの家庭でやりくりが厳しくなっている様子がうかがえます。

 

お小遣い制は、夫が給与を妻に全額渡し、妻が家計を一括管理して夫に一定額を渡すという、昭和の家庭モデルが背景にあります。しかし、共働き世帯の増加や家計管理の多様化などもあり、現在の生活スタイルには合わなくなってきている側面も否めません。

 

「こんなに必死に働いているのに、なんでお金がないと思いながら生活しないといけないのか」というマサヒロさんの不満は、多くの人が共感できるものといえるでしょう。特にマサヒロさんのように月収90万円という高水準の収入があっても、夫婦間のコミュニケーションが不足し、家計が「ブラックボックス化」してしまう家庭はトラブルの種になりやすく、今回の事例もそのひとつといえます。

 

トラブルを回避するためには、お小遣い制そのものの是非を夫婦でおさえるほか、クレジットカード明細や貯金額、大きな出費の予定などを可視化し、夫婦で共有する必要があります。また、「高額な買い物をする際には必ず事前に相談する」など、夫側だけでなく妻側にもルールを設けることで、双方が納得しやすい家計管理につながるでしょう。

 

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