定年退職を機にスタートさせるセカンドライフ。何にも縛られず、悠々自適な毎日――そんな夢のような日々がかなうとはかぎりません。まとまった退職金を手にしながらも、悠々自適の生活から一転、窮地に陥った男性のケースをみていきます。
「ついに自由だ!」〈退職金2,500万円〉60歳夫、定年とともに会社を去る決意。悠々自適のはずが「地獄でしかない」とため息のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

退職金2,500万円とマイホームがあるのに…始まった「地獄」

「あのときは、ようやく重労働から解放されて、これからは妻と二人で穏やかな日々を過ごせるのだと信じて疑いませんでした。それがまさか、自分の家であって自分の家ではない場所で、毎月怯えながら暮らすことになるなんて……」

 

都内のメーカーで40年弱働き、60歳で定年退職を迎えた大島和雄さん(60歳・仮名)。手元には2,500万円の退職金があり、住宅ローンも完済していました。長年家族を支えてきた大島さんにとって、定年は「本当の自由」の始まりを意味していました。しかし、そのささやかな幸福は、ある日突然自宅を訪れた訪問勧誘によって崩れ去ることになります。

 

退職から半年が経った頃、大島さんの自宅に不動産業者を名乗る男がやってきました。男は「将来の資産整理」を提案してきたといいます。

 

「退職金があっても、今後の医療費を考えれば現金はいくらあっても困りません。今のうちに自宅を売却して現金化し、そのまま家賃を払って住み続ければ、固定資産税の負担もなくなり老後資金にゆとりが生まれます」という、いわゆる『住宅のリースバック』の勧誘でした。

 

当初は断っていた大島さんですが、業者の執拗なアプローチは続いたといいます。

 

「一度断っても別の担当者が何度もやってきました。長いこと『今契約しないと損をする』と言われると……定年後の生活に漠然とした不安があったこともあり、最後は恐怖と疲れからか、『これが最良の選択』と思うようになり、署名捺印してしまいました」と、大島さんは振り返ります。

 

契約後、大島さんの手元には自宅の売却代金が振り込まれましたが、その額は市場相場よりも大幅に安いものでした。さらに悲劇は続きます。契約からわずか半年後、不動産業者から「近隣の家賃相場が上昇した」という理由で、一方的な家賃の値上げを通告されたのです。想定を大きく上回る出費となり、せっかくの退職金を取り崩さざるを得ない事態に陥りました。

 

「住み続けられると言われたのに、これではただの搾取です。毎月の支払いを考えると悔しくて夜も眠れず、今の生活は地獄でしかありません」と、大島さんはため息をつきます。