(※写真はイメージです/PIXTA)
「悲しい気持ちになります…」後日届いたハガキで突きつけられた〈振込額の現実〉
同僚の言葉が頭をよぎり、恐る恐るハガキを開いたヨシオさん。そこに印字されていた「控除後の振込額」を見て、思わずため息をついたといいます。
「同僚から聞いてある程度の覚悟はしていましたが、実際に税金や保険料が引かれたあとの金額を文字で見ると、悲しい気持ちになりますね……」
年金からの天引き(特別徴収)は、初回の振込時から所得税が引かれ、介護保険料や国民健康保険料などの天引きがスタートするのは多くの場合、半年から1年後になります。住民税は翌年度から引かれるようになります。すべての天引きが揃うと、多くの受給者の年金の手取り額は額面の85%〜90%程度に落ち着きます(※お住まいの自治体や個人の条件によって異なります)。
ヨシオさんの引かれている金額自体は、大きくはありません。しかし、月15万円の年金収入を前提に生活設計をしていたヨシオさんにとっては、想像以上につらいものでした。振り込まれる年金から家賃4万円と光熱費や通信費などの固定費を差し引くと、手元に残る生活費にはまったくゆとりがなくなり、思い描いていた「たまの温泉旅行」などに行く余裕はありません。
「今となっては情けない話ですが、給料と同じで年金にも『額面』と『手取り』があるなんて知らなかったです」
年金の正しい手取り額を把握せずに老後生活を送ろうとしていた見通しの甘さを、ヨシオさんは今になって悔やんでいます。
半数以上が「老後資金」は足りないと回答…データで見るシニアの貯蓄の実態
「年金は額面通りに振り込まれる」という誤解は、ヨシオさんのように一生家賃を払い続ける賃貸住まいのシニアにとって、老後のライフプランを揺るがすダメージになりかねません。
内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によると、「現在の貯蓄の額は生活をしていく備えとして十分か」という問いに対し、「足りない(少し足りない+かなり足りない)」と答えた人は、全体で57.1%である一方、「賃貸住宅(民営のアパート、マンション)」に住む人に限ると74.2%に増加しています。
さらに、「1,900万円の貯金があっても不安」という感覚もデータから裏づけられます。同調査によると、ヨシオさんと同じ金融資産「1,000〜2,000万円未満」の層であっても、全体の60.2%が「生活費のために預貯金を取り崩している(よくある+時々ある)」と回答していることがわかります。
賃貸暮らしの場合、家賃という一生続く支出がある以上、年金の手取り額が想定を下回るダメージは想像以上でしょう。1,900万円の貯金があっても、病気などの急な出費があった際に取り崩しのペースが一気に加速し、いずれ資金が底をつく「老後破綻」の危機に直面しかねません。
「ねんきん定期便はあくまで額面であり、手取りは1割〜2割ほど少なくなる」という現実を現役時代から正しく理解し、手取りベースでの老後設計を行うことが重要であると、この事例とデータは示唆しています。
[参考資料]
内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」