老後資金は「見せ方」が重要…“平等”より“公平な距離感”を

佐藤さん夫妻のケースは、決して特殊な例ではありません。老後資金に関する相談の場でも、「子どもに資産状況を話したら、何となく関係が変わってしまった」という声は少なくなく、「どこまで伝えるべきだったのか」という後悔とともに語る人もいます。

口座情報や連絡先の共有は大切です。ただ、残高や資産総額まで細かく伝えたことで、親子のお金の距離感が変わってしまうケースもあります。

では、具体的にどうすればよいのでしょうか。

口座の共有は「何が・どこにあるか」まで

まず、「何が・どこにあるか」の共有にとどめることを検討してください。銀行や証券会社の口座、生命保険、不動産の名義など、いざというときに家族が困らない情報を整理しておくことは大切です。エンディングノートに在りかや緊急連絡先をまとめておくだけでも、備えとしては十分です。

援助のルールを決めておく

また、援助を求められた場合は「貸すのか、渡すのか」「上限はいくらか」を夫婦間で事前に決めておくことが重要です。その場の流れで答えてしまうと、断りにくい状況が続いてしまいます。「気持ちはあるけれど、今は難しい」と答えられる準備をしておくこと自体が、老後資金を守ることにつながります。

佐藤さん夫妻も、今ではこう振り返ります。

「お金を預けている金融機関と“平等に残したい”という事実だけを、伝えておけばよかったのかもしれません。結果的に、娘に援助を繰り返したことで、“平等”と考えていた意味も薄れてしまいました。娘には、改めて、『これ以上、今の時点でお金を渡すつもりはない』と伝えるつもりです」

老後資金は、"残すためのお金"である前に、"自分たちが安心して生きるためのお金"です。だからこそ、「平等」にこだわるより、それぞれの親子関係に応じた"公平な距離感"を選ぶことが、結果として家族全員を守ることにもなるのです。

三原 由紀
プレ定年専門FP®

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