「認知症になる前に、子どもたちへ資産状況を共有しておこう」――そんな思いから、老後資金の詳細を初めて明かした70代夫婦。しかし、その日を境に、長女からの"少しだけ助けてほしい"が増えていきました。悪意があったわけではありません。ただ、“親に資産がある”と知ったことで、親子のお金の距離感は少しずつ変わり始めていたのです。“善意の共有”が思わぬ波紋を呼んだ背景について、FPの三原由紀氏が解説します。
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「親の金をアテにしているのか」…通帳と証券口座を一覧にして〈資産5,000万円の内訳〉を明かした70代年金夫婦。“子どものため”のはずが、長女の「まさかの行動」に深まる後悔【FPが解説】
「平等」のつもりが…老後資金の共有で起きる“境界線の変化”
近年、認知症対策や相続トラブル防止の観点から、子どもへの資産状況の共有を勧める声が増えています。
実際、慶應義塾大学経済研究所が2024年3月に実施した「老後の資産管理に関する意識調査」によると、認知症への不安を抱く高齢者は64%にのぼります。一方で、子どもに財産の状況を伝えている人は約35%にとどまっており、「必要だとは思いつつも、なかなか踏み出せていない」という実態が浮かび上がります。
また、いざ伝えるとなったとき、問題になりやすいのが「どこまで共有するか」です。佐藤さん夫妻のように、「兄妹だから平等に」と考える親世代は多くいます。
しかし、子どもたちの生活状況や親との距離感は、それぞれ異なります。そして、物理的・心理的に「親と近い距離にいる子ども」ほど、資産額を知ったときに、それを"身近なセーフティネット"として意識してしまうこともあるようです。由美さんも、こうしたケースに当てはまったのかもしれません。
「困ったときは頼れる」「どうせ将来もらうお金なら」という気持ちは、悪意から生まれるわけではありません。ただ、資産の全体像が見えてしまうことで、無意識のうちにそうした発想が生まれやすくなる――これは、個人の問題というより、人が「お金の存在を知ったときに起きやすい心理」として理解しておく必要があります。
もちろん、家族で支え合うこと自体は悪いことではありません。ただ、親子だからこそお金の境界線が曖昧になりやすい――その難しさが、老後になって表面化することは珍しくないのです。