「子どもが困らないために」「将来もめないために」と詳しく説明したが…

博さんは、連休に子どもたちを自宅に呼び、通帳や証券口座の一覧を見せながら説明し始めました。

「〇〇銀行にはだいたい900万円。△△銀行と□□銀行には500万円ぐらい。定期と普通がある。あとは、証券会社だな。ここに残りのほとんどを入れている。それと、この家。――うちの資産はこんな感じだ」

長女の由美さんが「すごい。お父さんたちに“老後の不安”はないね!」と、笑顔を見せた一方、長男の健一さんは少し表情を曇らせました。

「……全部、俺たちに言う必要ある?」

健一さんは、直感的に何かを感じ取っていたのかもしれません。しかし、博さんは答えます。

「何かあったときに、お金の在りかがわからないと、お前たちに迷惑をかけるかもしれないから。それに、兄妹なんだから、平等にしておかないと後でもめるだろ」

その場では穏やかに終わりました。しかし、3週間後、由美さんから1本の電話がかかってきたのです。

娘の行動に膨らむ違和感「親の金をアテにしているのか?」

「大学の後期学費や部活の遠征費が重なって、ちょっと厳しくて……少しだけ助けてもらえない?」

最初は数万円でした。「どうせ最後は子どもに残すお金だから」そんな思いもあり、夫妻は援助をしたといいます。しかしその後も、「住宅ローンのボーナス払いがきつい」「夫が戻るまで生活費が苦しくて」 と相談は続き、援助額は徐々に増えていきました。

そんな娘に、博さんは言いようのない違和感を覚えるようになったといいます。

夫妻の住む家は、由美さんが暮らすマンションから2駅ほど。パート先からの帰路途中でもあり、仕事帰りに立ち寄って、一緒に夕飯を食べることも少なくありませんでした。

「お母さん、これ持って帰っていい?」

余ったおかずを持ち帰ったり、一緒にスーパーへ行けば、和子さんが自然に娘の分まで会計したりすることもありました。また、由美さんは以前から、「この家なら少し手を入れれば、二世帯でも住めそうだよね」と口にすることもありました。

繰り返される娘の“お願い”をきっかけに、何とも思っていなかった過去の言動さえ気になるようになっていきました。

「娘に悪気はないと思う。でも、“親の資産を前提に生活を考えている”ように感じてしまったんです」