現代の日本において、高齢化したひきこもりを家族が支える問題は深刻な社会課題となっています。このリスクは親の死後、残されたきょうだい間へと引き継がれ、新たな孤立を生み出しています。ある姉弟の事例から、きょうだい間の共倒れを防ぐための教訓をみていきます。
限界です…〈年金月16万円〉〈貯蓄2,500万円〉65歳長女、老後安泰のはずが悲鳴。原因は「20年間実家を出ない」58歳弟 (※写真はイメージです/PIXTA)

「8050問題」のその後に待ち受ける、共倒れの現実

厚生労働省『2024(令和6)年 国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯における所得の大部分を公的年金・恩給が占めており、所得のすべてが年金という世帯も4割を超えます。

 

美智子さんの場合、月16万円という金額は単身であれば十分に生活を維持できる水準ですが、成人男性の生活を丸ごと一人分依存されるとなると、家計のバランスは一瞬で崩壊します。

 

「私の年齢を考えると、これから先、いつ病気になって入院するか分かりません。もし私がお金を動かせなくなったら、弟はどうなるのでしょうか」

 

浩二さんは30代半ばまで会社員として働いていたため、10年強の厚生年金加入期間があります。退職してからの約20年間は、親が申請を済ませていたため国民年金保険料の「全額免除」の承認を受けていました。

 

これから先も保険料の納付がないと仮定すると、将来的に手にする年金額は約月5万円。ひとりでの自活は不可能といえる金額です。

 

美智子さんが直面している状況は、親が亡くなった後の「8050問題」が、そのまま「高齢のきょうだい間」にスライドした形です。親が健在なうちは親の資産や手続きによって隠されていたリスクが、親の死によってきょうだいへと一気にのしかかってくるのです。

 

こうした悲劇を防ぐために、世帯分離や財産管理の法的な措置、そして福祉的な介入を早期に行うことが求められます。

 

たとえば、ひきこもり地域支援センターや、各自治体の「ひきこもり相談窓口」といった専門機関へのアクセスが第一歩となります。また、本人の財産管理や将来の生活設計については、社会福祉協議会が実施している「日常生活自立支援事業」や、成年後見制度の活用を視野に入れることが有効です。

 

「これまでは相談することすら恥かしいと思っていました。でもひとりでは、もう限界」

 

親や自身が築いた資産がどれほどあっても、適切な介入がなければ、働かない家族の扶養問題は一瞬でその資金を溶かしていきます。きょうだい間の共倒れを防ぐためには、個人の限界を認め、一刻も早く公的な支援の手を借りる決断が必要とされています。