(※写真はイメージです/PIXTA)
カレンダーの裏に遺された「1万円の重み」
ある年の盆休み、ワタルさんは、実家に帰省していました。ユウコさんが近所のスーパーへ買い物に出かけているあいだ、ワタルさんは手持ち無沙汰になり、実家の台所を少し片付けることにしました。
そのとき、冷蔵庫の側面に吊るされた古いカレンダーの裏に、ユウコさんが手書きでつけている「家計簿」をみつけたのです。そこには、徹底して切り詰めた暮らしの現実が刻まれていました。
「〇月〇日 もやし 30円、豆腐 40円。見切り品のパン。今月はエアコンを我慢する」
「〇月〇日 お肉が安かったけれど、今月は我慢。もう少し削れる」
そして、カレンダーの端には、毎月少しずつ「2,000円」「3,000円」と書かれ、数ヵ月分の合計が「10,000」という数字になって丸で囲まれていました。
ユウコさんは、日々の食費を数十円単位で削り、夏場のエアコンさえも限界まで我慢して、息子が帰省したときに渡す「1万円札」を、何ヵ月もかけてひねり出していたのです。
変わらない「母親の背中」と、本当の親孝行
買い物を終えて帰ってきたユウコさんの手には、ワタルさんの大好物である唐揚げ用の鶏肉が握られていました。少し腰の曲がった小さな背中で、嬉しそうに台所に立つ母親の姿をみた途端、ワタルさんの目から涙が溢れて止まらなくなりました。
ワタルさんは、母が握らせてくれていた1万円札の本当の意味を知ったのです。それは単なる金銭ではなく、「何歳になっても、あなたを支える母親でありたい。不自由のない大人に育て上げたのだから、ひもじい思いをさせてはならない」という、ユウコさんのプライドであり、たった一つの生きがいだったのです。
その日の夜、ワタルさんは、ユウコさんが作った唐揚げをいつも以上に「美味しい、美味しい」と何度もおかわりをしました。ユウコさんは、それを見て本当に幸せそうに目を細めていました。
東京へ戻る日、やはりユウコさんは玄関先で、ポチ袋に包んだ1万円札を握らせてきました。
「ありがとう、母さん。大切に使うよ」
今度は拒まずに、ワタルさんはその「涙のお金」をしっかりと両手で受け止めました。そして、新幹線の中から、「無事に着いたよ。唐揚げ、本当に美味しかった。またすぐに帰るね」と、初めて自分から感謝のメッセージを送りました。
親が子どもに注ぐ愛情は、いくら稼げるようになっても、何歳になっても、決して返しきれるものではありません。しかし、その少し無理をした、器以上に深い優しさを「ありがとう」と笑顔で受け取ることこそが、いまのワタルさんにできる、最高の親孝行なのかもしれません。
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