「もし数億円の資産があったら、会社なんて辞めて自由に暮らしたい」―そう考える人は少なくないでしょう。しかし、十分な資産を持ちながらも、あえて“普通の会社員”として働き続ける会田さん(46歳・仮名)。その背景にあるのは、幼少期に見てきた「働かずに家にいた父親」の存在でした。“隠れ億リーマン”の生き方から見えてきた、資産形成の先にある「本当の豊かさ」とは? CFPの伊藤寛子氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「資産3億円あります。でも、会社員は辞めません」…今日も満員電車で通勤し、上司の小言に付き合う46歳男性。“隠れ億リーマン”の根底にある「働かない父」という反面教師【CFPが解説】
会社員という“普通の身分”には、意外なほどメリットが多い
会田さんが会社員で居続けるのは、現実的なメリットも少なからずあります。
例えば、健康保険です。会社員であれば、毎月の健康保険料は労使折半(会社が半分負担)です。さらに病気やケガで長期間休職したとしても、傷病手当金として給与の約3分の2が最長1年半支給されます。これはリタイアした無職や個人事業主が加入する国民健康保険にはない手厚い保障です。
また、厚生年金に加入し続けることで、将来受け取る老齢年金は基礎年金のみの人に比べて年間で100万円以上の差が出ることも珍しくありません。
さらに、会田さんにとって価値があるのは「社会との関わり」と「精神的な健康」の維持です。昨今ブームとなったFIRE(早期リタイア)ですが、経済的な不安から解放され、自分らしい人生を送る。その生き方に魅力を感じる人も多いでしょう。
ただし、FIREすることだけが目標にならないことが大事で、いざFIREを達成しても、その後に明確な生きがいやコミュニティを持たない人は、時が経つにつれて孤独感を感じたり、生きがいを見出せなくなったりしてしまった、というようなケースもあります。
問題なのは「働かないこと」そのものではなく、社会における自分の「役割」や、何を軸に生きるかなのかもしれません。
